チャンネル登録者、好感度、顔色、どれもうかがえずここまで生きながらえてきた〈徳井健太の菩薩目線 第206回〉

平成ノブシコブシ・徳井健太

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第206回目は、人の顔色をうかがうことについて、独自の梵鐘を鳴らす――。

 佐久間(宣行)さんが総合プロデュースを手掛ける、「ラフ×ラフ」という8人組のアイドルグループがいる。彼女たちは、曲中に大喜利をしたりクイズをしたり、“ザ・バラエティ”なアイドルだ。

 みんな個性があって面白い。だけど、まだまだ若いアイドルさんに変わりはないから、悩みも尽きないらしい。そんな背景もあって、「ラフ×ラフ公式YouTubeチャンネル」にゲストとして呼ばれ、人生相談をすることになった。若い子に、僕みたいなおっさんが贈る言葉なんてあるのかしら。

【超本音】ノブコブ徳井のアイドル人生相談!超本音に佐久間Pもマジ回答!

 「私はどうしても顔色をうかがってしまって、ウケているかウケていないかが気になってしまう」

 そんな相談をされた。欲を言えば、真剣な悩みは一回家に帰ってじっくり考えたい。でも、そういうわけにはいかない。世の中の悩みは、その場で返さなきゃいけないことが多いけど、なんでだろうね。

 うかがうってことは、周りをよく見ているし、状況に応じてあれこれ考えることもできるだろうから(もちろん、空回りをすることもあるだろうけど)、うまくハマればMCタイプのスーパーオールラウンダーになれる可能性を秘めているってことでもあると思う。

  逆に、顔色をうかがわないってことは、くっきー!さんやロバートの秋山(竜次)さんのように自由奔放、縦横無尽に現場を駆け回る一騎当千タイプになれるかもしれない。

  うかがうにしてもうかがわないにしても、とことん突き詰めていくしかないということを、僭越ながらお伝えした。

  家に戻って、あらためて考えてみた。

  最終的には、「自分は顔色というものをうかがったことがないかもしれない」と、自分自身を見つめ直してしまった。思い返せば、若手時代から顔色が何色なのか気にすることなんてなかったなぁ。自分が一騎当千タイプだなんて思ってもいないです。あの人たちはバケモノだから。そうではなくて、よくもまぁ顔色を気にせずに、これまで生き延びてきたなという自問自答といいますか。

  普通だったら、ある程度権限を持っている人の顔色をうかがったりするものだと思う。テレビだったら、プロデューサーやディレクターの反応は気になるし、YouTubeだったら、チャンネル登録者数や再生回数に影響を与える視聴者の反応が気になる。

  僕はそこが抜け落ちているからイマイチなんだろう。自分でも本当に人気がないと思っている。そりゃそうだよね。顔色を気にしない人間は、つれないもの。

  一人で勝手に好きな店に行って、好きなもんを注文して、自分の好きなタイミングで退店するような身勝手な奴に調子を合わせてくれる人なんてなかなかいない。「ファンです!」と言ってくれても、手を取って一緒に踊るようなことをしないんだから、ホントに良くない。

  僕は、もともと人気者になりたいといった気持ちもないから、顔色をうかがわないのかもしれない。ということは、顔色をうかがわないってことは人気者にはなれないけど、誰かの評価に縛られることもないから自由なのかもしれない。

  若手の頃、同期がテレビに出るようになっても、不思議と嫉妬心を抱くことはなかった。本当に。綾部と又吉くんがピースを結成したとき、絶対に売れると思った。相方の吉村も同じことを思ったみたいで、実際に彼らが売れ始めると「これで俺たちは売れなくなった」と嘆いていた。

  僕は、それがどうしても不思議で、何をそんなに嘆く必要があるんだろうと思った。吉村は呆れたような表情で、「席が埋まったんだから凹むに決まってんだろ」と話していた。でも、僕は平成ノブシコブシは売れると確信していた。ピースが売れ始めたってことは、自分たちの審美眼は正しかった――。だから、自分たちの感覚は世の中に受け入れられるんだろうから、売れちゃうんだろうなと楽しみにしていた。

  顔色をうかがい続けると、自分のことを信じられなくなる。世の中には、承認欲求があふれすぎていて、さほど承認欲求がない人でも、隣の承認欲求が青ければ、自分の承認欲求も青々と浸食されていく。うかがうと伝染してしまう。だからね、そんなにうかがわなくて大丈夫だよ。なんて、結局は自分に言い聞かせている。のかもしれない。

 

【プロフィール】
1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen 
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC-9P1uMojDoe1QM49wmSGmw