バスケ男子日本の歴史的快挙をドキュメンタリー映画化した大西監督に聞く「18点差ビハインド、どれだけの人が彼らの勝利を信じていたか」
あの夏、日本中を驚嘆と歓喜に包んだバスケ男子日本の熱闘に大スクリーンで没入する! 2023年8月、沖縄で開催されたFIBAバスケットボールワールドカップ2023。東京2020オリンピックで女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバスHCのもと日本代表“AKATSUKI JAPAN”は格上ばかりの“死の組”から悲願の五輪自力出場を目指す…! 試合映像や舞台裏の密着映像に加え、ホーバスHCや代表選手、さらにはあのレジェンドたちにもインタビューを行い、あの歴史的快挙を生んだ彼らの「信じる力」に迫るドキュメンタリー映画『BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち』が6月7日より4週間限定公開。
「大スクリーンで“あの日の沖縄アリーナ”を体感してもらいたい」
「実は僕もテレビでたまたまフィンランド戦を見て“今の日本バスケってめちゃめちゃおも白いな!”とAKATSUKIの一ファンになったという感じなんです(笑)」と本作を手がけた大西雄一監督。
「オーストラリア戦は仕事で見られなかったんですけど、ベネズエラ戦とカーボベルデ戦は見てパリ五輪出場決定を見届けました。でもそのときはまさか僕に本作のオファーを頂けるとは思っていなくて。普段はテレビのディレクターなどをやっていて、これまでにもMLBやWRCなどの番組を手がけたりしていたんですがBリーグは立ち上げのころに試合を見に行ったりしていた程度で、しばらく日本バスケの情報から離れていたんです。
そんな僕が“ブースター”たちを満足させるような作品を作らないといけないわけですから。初めは、これは“ハンデ戦”だと思いましたね(笑)。それでとにかく代表選手1人ひとりの情報から日本バスケの歴史まで、一から勉強し直して、それをどう作品に落とし込むかを考えていたとき、FIFAから届いた試合の国際映像を見たんです。当然そこには実況音声が入ってないので、ボールを突く音、バスケシューズのキュキュッという音、観客の皆さんの“ディーフェンス!ディーフェンス!”の叫び声…会場の音がはっきり聞こえて来て、これだと思いました。大スクリーンで“あの日の沖縄アリーナ”を体感してもらえたら、と。
一方で、90分しかないこともあり、選手のデータや試合の展開といった説明的な要素は最小限にとどめています。これ1本見たからお腹いっぱいではなく、見た後にネットで選手のプロフィールやBリーグのことを調べたり、実際に試合に行きたくなる映画になったら、と。特に試合シーンは音楽にのせてテンポよく見せているので“ミュージックビデオ・ドキュメンタリー”とでも言うか…そんなジャンルはないですけど(笑)、かっこいいMVのように何度も繰り返して見たくなると思います」
18点差ビハインドからの巻き返し場面や、パリ行きのカウントダウンが迫る最終戦クライマックスを盛り上げるのは、あの“胸熱”な音楽たち。
「10-FEETさんの『第ゼロ感』は最初から使用交渉をお願いしました。試合会場で流れちゃっていますからね、使わざるを得ないというのもあるし(笑)。でもあの曲だけだとやっぱり『THE FIRST SLAM DUNK』のイメージが強いので、この映画のためにオリジナルで、Rude−αさんにテーマ曲『AKATSUKI』を作っていただきました。やっぱりバスケはアメリカのストリートカルチャーと結びついているのでヒップホップを使いたくて。まさにAKATSUKIの思いが込められた、最高にかっこいい曲になったと思います」
さらに、大のバスケファンで知られる俳優の広瀬すずがナレーターを務める。
「実は広瀬さんには最初に “今回、主人公はAKATSUKI JAPANなので、広瀬さんには、彼らや彼らのゲームが引き立つような脇役になってもらいたいんです”とお願いしました。ドキュメンタリー映画のナレーションは初めてとのことだったんですが、見事な“脇役”ぶりで、途中から広瀬さんだということを忘れてしまうくらい作品になじんだナレーションをしてくれました。そういえばアフレコのとき、広瀬さんが途中で試合に見入ってしまって、読むのが止まってしまったことがありました(笑)。試合会場で見ていたときの感覚がよみがえったとおっしゃっていて。現地で観戦していた広瀬さんが見入ってしまうほど没入できる作品になったのかと、うれしかったですね」