NYは日本食人気でラーメン3500円、街には猫サイズの“ネズミ”?「今の日本人にはハードルが高い街」で女性画家が暮らし続ける理由

Koh(コウ)…東京都出身。油彩画家。2016年にNYに移住。パーソンズ美術大学で美術学士号を取得、Honors(成績優等生)で卒業。ロンドン芸術大学でも交換留学生として美術絵画学士課程で学ぶ。矛盾(生と死)をコンセプトに、人間の複雑な心理状況を表現する。

【“世界で一番”が集まる街から日々、刺激を受け…画家として活動の場を広げる】

ーそんなNYで画家として活動するKohさん。写実を基調に、人物の複雑な内奥を情感豊かに表現する作品は、演劇や音楽など他の芸術分野の人々から好評を得ることも多く、先日は“音楽の殿堂”として有名なカーネギーホールの代表、芸術監督兼総支配人クライヴ・ギリンソン氏のオフィスに作品が飾られることになった。

「パンデミック中の2021年に、1年半、公演の機会を失っていたメトロポリタンオペラの友人たちを、私の知り合いの日系企業の役員の方に紹介したところ、それがきっかけとなって、日米の文化交流と芸術支援をサポートしてくれるエンジェル投資家が現れ、ハドソンヤードにある〈エッジ〉という人気の展望台でパンデミック以来初の有人コンサートを開催することができたんです。そうしたら今度は音楽以外の分野でもNYで頑張る日本人芸術家を応援しようという動きが日本クラブ(1905年創設、初代会長・高峰譲吉)から生まれ、今回のお話を頂いたんです」

ーギリンソン氏が自らのオフィスに飾る絵として選んだのは…。

「ポートフォリオを持参して直接見ていただいたんですが、坂本龍一さんをモチーフに描かせていただいた作品を選んでいただきました。ピアノを弾く坂本さんの絵がカーネギーにもよく合っているし、作品のテイストも好みだと、とても喜んでくださって。ギリンソンさんはロンドン交響楽団で長くマネージングディレクターを務め大英帝国勲章(CBE)を与えられている方で、ご自身も芸術一家ご出身のチェロ奏者。彼のオフィスには、カーネギーに出演する一流音楽家から各界のVIPまでが訪れるので、いろいろな方に作品を目にしてもらえるのではと期待しています」

 カーネギーホールといえば、1891年の創設以来、クラシックの一流演奏家や楽団はもちろん、ビートルズやローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイといった現代音楽の寵児たちもコンサートを行ってきた場所。

「日本の音楽家だと内田光子さんや辻井伸行さん、フジコ・ヘミングさん。小澤征爾さんも何度もここで指揮をされていますね。最近だとYOSHIKIさんや角野隼人さんがコンサートをして注目されました。やっぱり世界的に活躍する日本の音楽家は多いなと感じます。アートの分野だと村上隆さんとかはこっちでも有名なんですけどね。ただ最近、日本人のクリエイティブ系の方と知り合うことが増えたんですが、日本のヘアメイクさんとかカメラマンさん、ケーキデザイナーさんとか、とても需要が高いそうです。有名ブランドやメットガラ(毎年メトロポリタン美術館で行われるファッションの祭典)で仕事していたり。そういったクリエイティブ系でこっちで活躍している人はエージェントがいる人が多いので、私もずっとセルフエージェントでしたけど、もっとチャンスを広げるためにも最近は頑張ってエージェントについてもらいたいと考えています」

ーもうすでにNYが自分の居場所?

「ここは治安も悪いし汚いし、家賃も物価も高いし…ってハードルは確かに高いです。でもやっぱり“世界で一番”が集まる場所、最初に何かが始まる場所でもあるので、何か目的がある人や世界で挑戦したい人にとっては大きなチャンスを見つけられる場所だと思います。一瞬たりとも止まらない街ですけど、私自身はここで生き延びる毎日が刺激的で楽しいんです(笑)。今は、早くアーティストビザを取得して、NYを拠点に世界で活動する芸術家になりたいと思っています。そして今後もいろいろな人とつながって芸術家としての幅を広げると同時に、芸術家とくに画家の地位をもっとオシャレでポジティブなものに変えたり、日本人のイメージをもっと輝くものにしていけたらいいなと思っています」
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)

世界最高峰の音楽家たちが演奏するNYカーネギーホールで音楽鑑賞(写真提供・Kohさん)