カーボンニュートラル思考で「まちを創る・守る」 未来に向けてアップデート
株式会社ミライト・ワン、みらいビジネス推進部まちづくりDXプロジェクトで、プロジェクトマネージャーを務める清水信司さん
温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする「カーボンニュートラル」の考え方は広く浸透し、日本各地でもその実現に向けてさまざまな取り組みが推進されている。SDGs(持続可能な開発目標)の達成の期限も近づくなかで、いろいろな技術も生まれている。ただ、実際にどんなことが行われているのか見えにくいのも実情だ。日本の「カーボンニュートラル」の現在地は?エネルギー制御技術を活かした独自のアプローチで「カーボンニュートラル」の実現に取り組む、 株式会社ミライト・ワンのプロジェクトリーダーに聞く。
環境意識や合理性だけでは進まない
株式会社ミライト・ワン(以下、ミライト・ワン)は、通信インフラ事業をコアとしながら、近年ではSDGsやカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みにも力を入れている。その中心となっている、みらいビジネス推進部まちづくりDXプロジェクトで、同プロジェクトのプロジェクトマネージャーを務める清水信司さんは、経緯についてこう語る。
「大手建設会社や新電力系の会社を経て、2019年11月、ミライト・ワンに入社し、このプロジェクトを立ち上げました。ミライト・ワンはもともと通信建設工事の会社ですが、高速道路やコンビニエンスストアにおけるEV充電設備の約半分を導入した実績があり、エネルギーインフラの分野でも貢献できるのではないかと考えたのがきっかけです」
プロジェクトでは「まちを創る・守る」をテーマに掲げている。清水さんは理由をこう説明する。
「まず、“守る”の部分ですが、ミライト・ワンは、NTTがまだ逓信省(その後の電電公社)と呼ばれていた時代の黒電話の回線敷設から始まり、自然災害時にはそれら回線の応急措置や復旧作業を行うなど、通信における社会インフラを縁の下で支えてきた、いわば黒子役の会社です。エネルギー分野においても、これまでの大規模発電から地域ごとの分散型電源へのシフトは、私たちの「インフラを守る」という企業文化にフィットすると思いました。
“創る”の部分ですが、カーボンニュートラルの実現には、市民一人一人の環境意識の高まりや、エネルギーを効率的に使う仕組み作りが不可欠です。しかし、それだけでは市民の共感は得られません。『オラがまちに誇れるもの』があってこそ、住民の行動変容にもつながっていく。だからこそ、カーボンニュートラルを通じた街づくりが重要なテーマだと考えたのです」
「スマートマイクログリッドシステム」とは
ミライト・ワンでは、カーボンニュートラルの実現に向けて「スマートマイクログリッドシステム」の導入を推進している。これは、CEMS(コミュニティ全体のエネルギーマネジメントシステム)とBEMS(ビル単位のエネルギーマネジメントシステム)から成るクラウド型のエネルギーマネジメントシステムだ。
「特長は、さまざまなメーカーの設備機器やセンサー情報を統合して一元管理できること。電力使用量や再エネ発電量、CO2削減量などをリアルタイムで可視化し、データに基づく運用改善や電力ピークカット制御などが可能になります」(清水さん)
住民や自治体など電気利用者にとっては、再エネ導入や省エネによる電気料金の削減がメリットになる。自治体や地域にとっては、脱炭素社会の実現に向けたまちづくりとしてのブランディングなどが期待できる。
「導入効果を最大化するには、地域のステークホルダーと一緒になって、エネルギーの『地産地消』の仕組みを作っていくことが大切です」(清水さん)