2大オスカー女優競演!繊細な映像で紡がれる濃厚なストーリー『メイ・ディセンバー ゆれる真実』を、観た!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
こんにちは、黒田勇樹です。
この1週間も暑さと突然の大雨に翻弄された気がします。東京とか日本とか地球はどうなってしまうのでしょうか?
ちなみに、先日の東京都知事選、僕が推していたドクター・中松さんは11位でした。お疲れ様でした。いや、投票権はなかったんですけどね。
では今週も始めましょう。
間もなく日本でも公開される本作、すでに海外では沢山の賞を受賞されているそうです。タイトルになっている「メイ・ディセンバー」とは“親子ほど年の離れたカップル”を表す言葉だそうです。ストーリーは、実際にあった事件に着想を得ているそうですが、完全オリジナル脚本。
面白かった!「人間」が、濃厚に描かれていて「都合の良いキャラクター」が出てこない。
全登場人物、いいところも悪いところも持ち合わせていて、強くもあり、弱くもある。
未成年と性的な関係を持ったことで、投獄された女性が獄中出産して、出所後、その当時未成年だった彼と結婚生活を送っていて、そこへ「事件を映画化するための役作り」をしに女優がやってくる、という始まりなのですが、若干のサスペンス的な要素もあり、見ごたえのあるヒューマンドラマでした。
主演を彩るのは、どちらもオスカー経験者のナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーア。
もう、演技を見てるだけでお腹がはち切れそうでした。
それを後押ししているのが、カメラワーク。
最近は、ジンバル(カメラの手ブレを補正する機材)やドローンの発達で「動く映像」が多用されることが多いのですが、そういう画作りはほとんどしていない。動く映像は『アイアンマン』とか『ジュラシック・ワールド』とかを想像してもらえばわかりやすいですかね? あれの真逆です。
パン(カメラを左右や上下に振る撮影技術)もほとんど使わないし、ズームインやアウトもかなりゆっくりとした速度で使っていました。
喋っている人のアップがドンドン切り替わるようなことも一切なかった印象。
圧巻だったのが、主演2人が会話するシーン。
何度か出てくるんですが、ほぼ1カットの固定のアングルで描かれます。
ただひたすらストーリーと演技を享受する時間が続きます。
複雑な家族関係や、地域の人間関係、映画の制作状況など、どちらかと言えば「見落とせない情報」が多く、そこに、これもまた実に複雑な個々の感情が表現されているので、あえて画を動かさず、観客に情報を洗練させていくようなカメラワークでした。
BGMも、ピアノとストリングスだけのシンプルな構成で、他に流れる音楽はラジオだったりライブだったり、実際にその世界の中で流れているもののみ。この辺も「情報量」を、かなり意識して作られていると感じました。
久し振りにゾクゾクして、観終わってからも後を引く、傑作でした!