“農耕民族”手塚裕之が“戦闘民族”トンガのイシ・フィティケフと対戦。タイトル戦アピールへ「判定でもいい。勝ちに徹する」

(©U-NEXT)
 試合を間近にした今、改めて対戦相手であるフィティケフ選手の印象はいかがですか?
「強いと思っています。戦績もいいですし、しっかりフィニッシュもしているファイターなので世界トップレベルだとは思います。ただ、世界トップレベルという意味では、自分は前回の合宿でもUFCのウェルター級の選手たちともスパーリングをしていて、そこで全然自分もやれるなっていう自信につながっているので、問題ないです」
 
 フィジカルデータを見る限り身長差が10cmあるようですが。これまでの戦いも含めて、ONEのウェルター級でやるうえで、フィジカル差を意識したことはありますか?
「あんまりないです(笑)。いや、大体みんな身長盛ってるんですよ。だから身長に関しては、多分あんまり変わらないです(笑)」
 
 ではいつもいざ対面して「あれ?」という、思ったより小さいなと感じるのですか?(笑)
「めちゃめちゃ思いますよ“みんな盛りすぎだろ!”って(笑)。大体10cmくらい盛っている人が多いですね。よく僕は“ウェルター級で、その身長でよくやれるね”って言われますけど、全然そんなことなくて。アメリカでもゴリゴリのウェルター級の選手は、大体僕と同じくらいですよ」
 
 ところで今回「コメvs.タロイモの代理戦争」とおっしゃっていましたが、真意を教えていただけますか?
「これで相手もコメ食ってたらどうしようとは思いますけど(笑)! 僕、マーク・ハントが好きで、彼の強さについて調べていた時に、タロイモをめっちゃ食っていたと知って。サモアの人はタロイモが主食なのですよね」
 
 タロイモというと、日本ではタピオカの材料というイメージですね。代理戦争という文字通り、世界最強の民族と称されるポリネシア人の主食「タロイモ」と、日本の主食「コメ」のどちらが強いのかを、ご自身の戦いで確かめるということですね(笑)。
「タロイモが主食として日本ではあまりなじみがないですから、どんなものなのかなと。それから向こうの人たちって、マオリに代表されるような戦闘民族ですよね。対戦相手にそういう血が流れていることを想像すると、たぎりますよね。いろんなファイターと試合できることこそが世界規模の団体の醍醐味でもあると思うので。ブラジルの選手やロシアの選手など、結構いろんな海外の選手とやってきたけど、サモア人と戦うのはたぎりますね! 戦闘民族を倒す農耕民族!」
 
 戦闘民族というルーツとは別に、ラガーマンだったバックボーンについてはいかがですか? ラグビー経験者特有のもの、たとえばスピードであるとか、フィジカルの強さであるとか、警戒している点はありますか?
「突進力という意味では速さはあると思いますけれど、入りの速さでいえば僕も空手をやっていて二瓶先生の入りをいつも体感しているので、それと比べれば相手は全然劣ると思いますし、自分のほうが懐に入るスピードであったり、スピードでは上だと思っています。ただ、パワーについてはラグビーをやっていたことでの強さがあると思っています。あんまり横の動きとかはないのかなって思っていますけどね。相手もオールラウンダーでしょうけれど、自分もオールラウンダーとして自信があって、特に自分のほうが打撃のクオリティーが高いと思っています」
 
 どのような展開になると思っていますか?
「相手は僕が唯一ONEで負けた試合を研究してくる感じがします。そうすると同じようにタックルで漬けにくるかなと思うのですけど、それに対してはしっかり切って、逆に自分がテイクダウンするか、その前に打撃で仕留めてしまうか、どちらにせよ相手のやりたいことはできずにこちらがフィニッシュしていると思います。打撃か寝技かは分からないけれどフィニッシュは狙います」
 
 フィニッシュ狙いで、流れでどうなるかということではあるものの、先ほども打撃の進化や優位性を語っていたなかで、今回はよりKOを狙うというようなことはありますか? タイトル戦に向けてのアピールという意味合いも出てくると思うのですが。
「色気出しちゃうとあまりいいことないの、知ってるんです(笑)。アメリカ大会だから承認欲求が出ちゃうかもしれないですけど(笑)、でも大丈夫です。僕はいつも“フィニッシュを狙う”と言っていて、それでこの5戦フィニッシュできていますけど、あくまでもフィニッシュは勝つための一番の最短ルートです。試合をリスクなく最後まで終わらせるための。だから、勝つことを一番のプライオリティーに置いているので、最悪、判定勝利でもいいとは思っているんです。それくらい勝ちに徹しています」
 
 ご自身のMMAのキャリアがアメリカで始まったことも踏まえて、今回デンバー大会に出ることには特別な思いがありますか?
「そうですね、やっぱり総合格闘技を始めた土地ですし、アマチュアのキャリアもずっとこっちで積んで“プロになって、自分がアメリカに呼ばれて試合をすることになったか!”と感慨深いことをちょっと思った瞬間はあるのですけど。そこでやっぱり勝たないと、別に“アメリカで試合がしたかった”ってわけじゃなくて“アメリカで試合をすることで名前を売りたい”ので、ここでしっかりフィニッシュしたいですね」
 
 北米で名前を売るということが、キャリアを通して目指してきたことのひとつなのですか?
「お客さんをとってみても、アマチュアのときから北米ファンはすごくエキサイティングで、僕もそういうファンの前で試合をするのは好きでしたし、やっぱり世界で一番大きな団体があって、MMAファンがすごく多いですから、そこで自分の名前を売れたら名誉なことですね。もちろん日本にも国内の大きな団体があり、有名になっているファイターもいますけど、自分が一番最初に目指したのは海外に出て世界の強豪たちと戦っていくことだったので。そういう意味では世界で名を売っちゃったほうが早いかなって。国内でいくら知名度を持つことよりも。だから今大会に出られることはとてもうれしいです」
 
 ケージでの試合となることについてはいかがですか?
「ここ3戦がリングだったのですけど、それ以外は自分の経歴がアマチュア含めてケージなので慣れていますし、ケージのほうが戦いやすいかなっていうのはありますね。リングにはリングの良い面があって、コーナーがある分、追い詰めやすいというようなことはありますが。ルンピニースタジアムのリングはMMAで考えるとちょっと狭いんです。自分がテイクダウンしたときに相手に立たれにくいっていうのはありましたけど、だから自分が下になると立ちづらかったり、狭いので腕十字に行ったときに体が詰まりそうになったりして。だから、より足も使えて、ケージなので万が一倒されても立ちやすいという利点を生かしていきたいです。
 
 ケージに入るときはどんな気分なのですか?
「雑念があるんですよ。前戦なんて“絶対これ勝ってボーナス!”とか(笑)。だから集中して、コントロールできることに徹したい、つまり勝つことだけを考えたいと思います」
 
 SNSで突然トラッシュトークなど展開されるのは、どういう心境といいますか、狙いがあって呟いているのでしょうか。
「呟きは注目を浴びたくて、ふざけてやっているだけです(笑)。承認欲求がすごくて」
 
 そのことで注目はされても、それに伴うアンチコメントなどが増えていくことは気にならないのですか?
「全く気にならないです。自分で蒔いたタネなので、そういうのはしょうがないです。分かったうえでやってるので。でも最近は、自分も父親だし、みっともないから落ち着こうと思っています」
 
 ご家族に「やめて」って言われたりも?(笑)
「妻はSNSをやらないので俺が暴れていることを知らないんですけど(笑)、客観的に見てスポンサーさんの企業イメージとかもあるので、改めようかな、って。でもそう考えながらも、承認欲求にかられてやってしまったりするので、エンターテインメントだと思って、見てくださいね!」
 
 では最後に、U-NEXTでライブ配信を視聴するみなさんにメッセージをお願いします。
「しっかりフィニッシュして6連続フィニッシュかましてくるので、よかったらご覧になってください!」
 
 なお大会の模様は日本時間9月7日9時よりU-NEXTで見放題ライブ配信される( https://video.unext.jp/livedetail/LIV0000006154 )。
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