東京都内の梅毒感染者2400人超「女性20〜30代、男性20〜50代まで幅広く広がっている」

 東京都医師会が9月10日、都内で定例記者会見を行い、都内で流行する性感染症「梅毒」に注意を呼びかけた。

定例記者会見で都内の梅毒感染者数に言及する東京都医師会の川上一恵理事

 9月1日までの都内の梅毒感染者数が2400人超と過去最多ペースで増加していることを受け、疾病対策を担当する川上一恵理事は「今、梅毒の感染者数は増えています。先日来、エムポックス(サル痘)の感染者数も増加していて、性感染症はとても注意しなければいけない病気」と言及。

 梅毒の現状を「エムポックスやHIVは同性愛の方など、限られたコミュニティーの中で広がっていた。ところが梅毒に関しては男女関係なく、女性は20~30代、男性は20~50代までに幅広く感染が広がっている点が問題。性風俗産業に従事している人に限られているわけでもなく、ごく一般の家庭の主婦の方たちにも広がってきている。東京都としても無料検査を実施するなど、いろいろと考えられる対策は取っているけれども抑えられていない」と川上理事。

 そのうえで「梅毒は最初のうちは皮膚に発疹が出てきます。よく分からない発疹が出てきた時、特に初期の症状は陰部に出てきますから、恥ずかしがらずに病院を受診してほしい。放っておくと発疹が消えてしまうが、治療しない限り病原体は体内に残っている。迷っているうちに消えてしまいますが、それからでもいいので受診してほしい。今、これ以外に打てる手はないです」と訴えた。

 川上理事は対策として「梅毒の場合はきちんと診断して、治ったことを確認できるまで医師の指示通りお薬を使えば治る病気。そういった意味で一般の方々への啓発を進める以外に方法はない。私どもも東京都と協力して、啓発のポスターを掲示するなどの展開を行っているが、できればマスコミの方々からの報道や若い人たちに影響のある方法など、みんなで協力して啓発する以外にないのではないか」と説明。

 さらに「梅毒には先天梅毒といってお母さんのお腹の中で感染し、生まれながらにして梅毒の影響を受ける赤ちゃんも増えてきている。そういった意味でも全力で対処していかなければいけないと思っている」と警鐘を鳴らした。

 感染者が増加している理由について「はっきりは分からない。ただし、やはり性に対する考え方が年々歳々変わってきている点もあるでしょう。また皮膚の症状は医師が直接、近距離で肉眼で見て分かるところが大きい。オンライン診療が増えてくるとモニター越し、しかもスマホのモニター越しではまず分からない。そういった意味で、診断の時期が少しずつ遅れることも広げている原因になるのかもしれないが、そのあたりもはっきりとした原因は不明」などと、対応の難しさを口にした。