【9月は認知症月間】2025年、東京の認知症高齢者は54万人へ 都医師会「“シン後期高齢者” の声で医療介護は変わる」【前編】

東京都医師会副会長で「ひらかわクリニック」(八王子市)の平川博之院長(撮影:上岸卓史)

 認知症高齢者が増加することによって起こりうる課題は?

平川「認知症高齢者に同居家族がいても、家庭介護を担当するご家族の身に何かがあると日常の風景はがらりと変わります。その穴を施設入所や訪問系サービスで補うのですが、訪問介護は人材不足と高齢化で存続が危うい状況です。この度のコロナ禍で感染の恐怖に怯えながらも献身的に各家庭を訪問し続けたホームヘルパーが疲弊し、介護現場を去っていく者が続出しました。人材不足で、訪問介護事業所の閉鎖が続いています。

 それにもかかわらず、今年度の介護報酬改定では訪問介護の基本報酬が引き下げられました。熟慮のうえでの判断でしょうが、今でなくてもと残念に思います。医師が外来で要介護・認知症高齢者を診察する時間を仮に10分程度だとすると、残りの23時間50分は在宅生活を支える地域の介護力が担っています。ホームヘルパーがいなければ在宅生活の維持も通院もできません。きわめて重要な地域の資源・財産である介護職なのですが、残念ながら社会的評価が十分だとは言えません」

 後編では東京都における認知症高齢者への取り組み、さらにアルツハイマー病の新たな治療薬についても聞いていく。

(TOKYO HEADLINE・後藤花絵)

参考文献:東京都政策企画局「2065年までの東京の人口・世帯数予測について」、厚生労働省「人口動態統計」、東京都福祉保健局高齢社会対策部「令和4年度認知症高齢者数等の分布調査」、「認知機能や生活機能の低下が見られる 地域在宅高齢者の実態調査報告書」(平成26年5月)
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