もはやどんなビジネスも無関係ではいられない!?「AI時代」の起業心構え
あらゆる分野・業種でもAIを活用する時代! まずはリテラシーを高めよう
AIビジネスはLLMの登場で大きく変化
「スタハのコンシェルジュ相談でもAI関連は増えてますね。これまでは、マッチングやシェアリングサービスなど、予測や分類といったところでAI(※1)を使ったビジネスの相談が多かったのですが、ディープラーニング(※2)を応用したLLM(※3)が出てきたことで大きく変化している印象。より“取っつきやすく”なったことで、さまざまな分野・業種でAIを取り込んだビジネスが生まれています。言うなればインターネットがコンピューターを扱う人だけのものではなくなったように、今後あらゆる領域に関係してくると思います。もちろんAIが特に効果を上げる、活用が進んでいく分野とそうでないものとはあると思いますが。
ちなみに “AIによって仕事がなくなる業種リスト”を上げたアーンツ論文により、AIに仕事が奪われるという危機感が広まったりもしましたが、その反証も出ていて最近ではそこまでのインパクトはないととらえられています。確かにAIによってシステム化が進んで仕事自体が無くなるものはあると思いますが結局、AIを活用することによって新しく仕事が出てくるので。
普段使っているメールサービスにも自動応答やリコメンドなどAIを使った機能が搭載されていますよね。もはやスマホを触っているだけで意識せずともAIを使っている時代です。分野や業種に限らず起業を考えている人はまず、AIを意識せず使っている側から仕掛ける側に回る視点を持ってみてはどうでしょう」
起業家育成の現場でもAIを活用
「私は早稲田大学で“人工知能とビジネスモデル創出”というテーマで5年ほどAIを使った起業家育成の授業をしているのですが、LLMが出たことで去年から教え方を変えてLLMありきでの事業創出にフォーカスしています。授業では、LLMを搭載したプロトタイプまで作ってもらうんですが、Python(※4)による構築と比べ各段にスピードが速くなりました。また今年から、ビジネスアイディエーションの段階からLLMと一緒に“壁打ち”をしたらどうなるか恩師と共に実験もしているのですが、まだ改善の余地があります。ちなみにウォールトン大学の研究で、あるテーマによっては人間がビジネスアイデアを考えるよりもLLMを活用してアイデア創出したほうが良いアイデアが4倍多かった、という報告があります」
まずは日ごろからAIを意識的に使う
「どんどんバージョンアップして進化していますし、LLMによって特徴が違ったりもするので、まずは使ってみることです。結局、大事なことはそのテクノロジーで何ができるかを理解していること。LLMそのものを作る技術は無くても何ができるかが分かっていれば、自分がどんなビジネスをしたいか考えることができます。
一見、AIビジネスとは関係のないサービスを考えている人も、日ごろからAIリテラシーを高めていれば、自分のビジネスアイデアにAIを取り込むとどうなるかという発想が生まれると思います。例えば医療の分野など、人間に対するインターフェースはAIではなく、人間であることが望ましいという面があります。新規事業を考える際にも、AIにアシストさせる部分と、人間でなければならない部分を上手く組み合わせることが大事だと思います」
AI業界でスタートアップを目指すなら…“差別化”を意識
「AI搭載」だけでは差別化できない
「AIビジネスというと、独自のAIモデルを開発するか、GAFAM(※5)やChatGPTといったAIサービスのAPIを使ってAIをビジネスモデルに取り込むかの、大きく2つに分けられます。前者は、とにかくものすごいコストがかかります。今注目されているLLMの多くにGAFAMやその人材が関わっていることからも分かるとおり、なかなか大変な事業です。というわけで日本でもAIビジネスの多くは後者のタイプが多い。
投資先としてもAI関連への注目度は高いですが、今やどこでもAIを活用している中では“AIを使ってます”というだけではあまりフックにはなりません。結局“アプリの裏側でChatGPTが動いてます”というサービスだと、大して差別化にならないんですね。実際、LLMを活用しているビジネスモデルを見ても、何かベースになるしっかりしたサービスがあって、そのエクステンションとしてAIを導入したサービスが多いです」
米国発AIスタートアップの動向を追う
「現在、日本のAI起業家をどんどん輩出すべく、大学でもAIを取り入れた起業家育成が広まっていますし、政府もAI事業者ガイドラインを策定したり、さまざまなサポートを設けています。今、世界のAIビジネスにおいてはプレイヤーが出そろってきた状態ではあると思います。LLMを生かすことでグローバル市場を目指すこともできると思いますが、そのためにはやはり海外のAIビジネスの現状や市場がどうなのか体験するのが一番良いと思います。そして常に最新の動き、主に米国発のAIビジネスの動向を常に追うこと。私もOpenAIやAnthropicなど、LLMのコアを手がけている企業の動向は常に注目しています。GAFAMの中でも、Googleは自前でGeminiを作ってますけどマイクロソフトのCopilotは裏側はChatGPTですし、世界のテックジャイアントもそういったAI企業と連携していたりする。そこからいろいろなビジネスに転用されていくので、そういった企業の動向を見ておくことで発想も生まれやすくなると思います」