「“人には無理”なことを可能にするAIと“人が求めること”を組み合わせ課題解決に挑みます」株式会社Michibiku Group 高澤皆生

 コロナ禍で高校1年時に起業を決意した高澤さん。大学入学後、ベンチャーでのインターン経験を経て、AIを活用したスカウト採用支援ツール「マッハスカウト」を開発。人材採用の課題解決に挑む若き起業家の挑戦と、AIビジネスへの洞察に迫る。

株式会社Michibiku Group代表取締役 高澤皆生(たかざわ かいせい)…早稲田大学在学中。早稲田AI研究会を立ち会げ、AI系のビジネスイベントを多数開催。2023年にEast Venturesの出資にて株式会社Michibiku Groupを創業。スカウト採用AI「マッハスカウト」等生成系AIを使ったサービスなど、事業を幅広く展開。

コロナ禍、通学できずにいた高1で起業を決意した学生起業家

 世の中の動きが止まったコロナ禍。高澤さんが起業を決意したのは高校1年。感染防止対策のため通学できずにいた日々でのことだった。

「ずっとスポーツをやっていて高校3年間も部活に打ち込もうと思っていたのが、ぽっかりと時間が空いてしまって。自分はこのままでいいのかなと立ち止まって考えたとき、何かに夢中になりたいと思いました。それが起業でした」

 大学に入学するや起業に向けベンチャーでインターンを開始。

「何社かやって無給だったり泊まり込むこともあったりしましたけど、やるなら“熱く”やりたいタイプなので楽しかったし何より勉強になりましたね」

 ときには起業を見直すほどの“実力不足”を感じることもあったと言うが「インターン時代の経験がなかったら起業はできなかった」と振り返る。

 大学2年生の5月から、起業資金のためシステムの受託開発や自ら立ち上げた学生団体でイベントを開催。実績と人脈を手にする。

「AI系のハッカソンイベントなどをして200人近く集められるまでになっていたんですが、そのきっかけでVCさんとマッチできて、自分たちの事業計画とイベント実績などを評価してもらい出資が決まりました。ちょうど若い起業家や生成AIへの投資熱が盛り上がっていた時期でもあったと思います」

 インターン時代に「他の社員さんが何時間もかけてやっていることを一瞬で終わらせる」衝撃に、生成AIビジネスの可能性を実感。

「同時に参入障壁が低いとも感じたので、差別化するには何と掛け合わせるかが重要だと思いました。企業のDXという観点でAIがこんなに注目されるのは、それだけ現状で課題を抱えている企業が多いから。であれば、その会社ごとの課題にフォーカスした形で、今後ますます困難になる人材採用、とくに近年多くの企業が行っているスカウト採用を、AIを生かしてアシスト、トータルプロデュースする。ここに勝機を見出したんです」

 スカウト採用メールの生成AIツール「マッハスカウト」を開発。その会社の採用基準を学習したAIがマッチングからスカウトメール作成までを一貫してサポートするサービス「Recnal」を立ち上げた。

「この10年でスカウト採用をする会社が増えた背景には、従来の人材紹介よりもコスパがいいという利点があります。とはいえ成果を出すには大体150〜200時間は必要。500人くらいに誠意を込めたスカウトメールを書いて送り、30人ほど面談して1人採用できるといったところです。しかも今、スカウトメールを使う企業がますます増え競争も激しくなってきているので、もはやスカウトメールを送れば成果が出るということではなくなってきています。当社の主なターゲット層である中小企業やベンチャーの、たった一人で複数の業務をこなす採用担当者さんにとっては、なおさら大きな負担となる。それを私たちのサービスなら、複数の採用媒体を一元管理しながらAIにマッチングからメール作成、送付、面談設定まで任せることが可能です。導入企業の担当者さんからは、とにかく楽になった、ストレスがなくなったという声を頂いています。工数でいうと月3時間から5時間くらいでお任せいただけるのでかなりの工数削減になると思いますし、成果も3倍くらい出ています。応募数に関しては平均300%と、かなり明確に出ます。展示会でデモを見てもらうと“これは人間には無理だね”という声をよく頂きますね。また、当初から想定していたわけではないんですが、とくに新卒のスカウト採用で、かなり成果が出ています。これはやはり自分が一応まだ学生なので、新卒採用に臨む学生のニーズが分かっているという点が大きいと思います。そういった現場の声を知るノウハウ部分も強みになっていると思います」

 AIビジネスに関心のある人へアドバイスするとしたら。

「生成AI系の起業だと、初期の段階でプロダクトを作りこむのは注意したほうがいいでしょう。プロトタイプは本当に簡潔に作ったほうがいい。プロダクトのコーディングに時間やリソースを割くより、現場の課題をヒアリングして当事者に触ってもらうことをなるべく早く始めるほうがいいと思います。自分たちも、お客さんの声を聞いて必要な機能とそうでないものを早くに気づくことができました。今、主要な生成AIのプラットフォーマーたちは圧倒的に強いですし、変化も本当に早い。なので、そこに立ち向かうよりもプラットフォーマーの変化に柔軟に対応して、新しく生まれたものをいかに早く発信していくか。高速で社会実装させて瞬間的に売り上げるような、むしろスモールビジネス的な回し方のほうがやりやすいと思います。既存のAIを使っていかに既存の業務をDXするかを考えたほうがスタートしやすいし、AIの進化にも順応しやすいわけです。例えばChatGPTを使ったサービスを作れば、ChatGPTのモデルがあがれば同時にそのサービスもグレードアップできますから。

 一方で、そうした生成AIを使っているだけだとあまり差別化できないので、生成AIと何を組み合わせるかが重要だと思います。すごくニッチな市場だけど伸びる可能性があるとか、DXが進んでいない業務をAIで変革するとか。私自身も、採用代行という分野を通して社会に大きな変革をもたらしたいという目標を持っています」

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