傷つけあった7日間。私たちはなぜ結婚するのか〈「さよならプロポーズ」最終話〉

愛を信じた女性陣、解決を見据える男性陣

　ところが、ギリシャから帰国して数ヶ月。アオイとモナはまだ、婚姻届を提出できていないままでいた。忙しい日常の中で衝突が増え、寝所を分けた日々もあったという。

　2組のカップルがギリシャに行った意味は、確実にあっただろう。区切りのない日々の中では、別れのきっかけも話し合いのきっかけすらも生まれない。気心の知れた友達に相談したところで、新しい考え方も芽生えない。新しい環境で、新しい人々と触れ合ったからこそ、今までにない価値観が生まれたのはたしかだ。

　それでもモナが言うとおり、人間はそんなに簡単に変わらない。結婚前に相手に感じた嫌な部分は、結婚しても嫌な部分として残り続ける。何もかもが気が合って、向こう80年一度もケンカしないなんてことも、そうない。

　では、私たちはなぜ結婚するのか。ギリシャの土地と、2組のカップルが教えてくれたその答えは「愛があるから」だ。嫌なところがあっても、ケンカはしても、愛がある限り一緒にいられる。

　旅の途中で誰かが「好きなだけで結婚できるわけじゃないのかも」と言っていたが、そんなことはない。ただ、結婚しても好きじゃなくなってしまうことはある。その時のことは、その時考えればいい。

　カホはシュウヘイに「なぜお金がないと幸せにできないのか」とも聞いた。お金があれば生活は保証されるが、幸せになれるかは分からない。ものすごくお金を稼いでいても、好きな人が仕事で忙しくて一緒に射られなければ、不幸せだと感じるかもしれない。

　要するに、幸せとは一元的なものではない。だから私たちは不安になるのだが、そんな時は自分の中で決めておくしかないのだ。最後に信じられるのはお金なのか愛なのか、それ以外なのかをだ。

　愛と決めるのであれば、話は早い。相手のことが好き。この先もずっと一緒にいたい。そう思ったら、きっとその時が結婚のタイミングだ。しかし、問題は必ず起きる。その度に、2人で解決していけばいい。そして解決に困った時にはきっと、2人でギリシャに行けばいいのだ。

　日本の婚姻率は年々減少している。それこそ、結婚を意識する人と出会えるだけで奇跡だ。だからこそその運命を掴んだ時には、相手や自分を信じて、前向きな未来を検討してみてもいいのではないだろうか。そう思わせてくれた2組のカップルに、感謝を送りたい。