デフスポーツと写真 【アフロスポーツ プロの瞬撮】
スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。
撮影/文章:長田洋平( 2024年11月29日~12月1日 デフ陸上日本選手権)
誤解を恐れずに言うと、デフアスリートは外見的には健常者と変わらない。
そのため、写真でデフスポーツを表現することは難しい、と思ってしまう。
デフスポーツと健常のスポーツ。見た目的に何が違うのかというと、まず挙げられるのは
審判とのコミュニケーション方法や器具だ。例えば、100mなどのトラック種目のスタートでは
スタートランプを用いて、視覚的にスタートの合図を知らせる。器具とアスリートをどう絡めて撮るか、
ということは現場でまず最初に考えたことだが、あとはどう撮るか、だ。
色々撮った中で選んだのは、掲載した1枚目の写真だ。
スタート直後の指がピンと伸びているのが分かると思う。なぜこれを選んだかと言うと
選手が走り出したと分かる形になっている頃には青いスタートランプは消えてしまうからだ。
ランプが青く灯るのは、本当に短い時間だけ。
そうであるがゆえに、説明的になり過ぎない写真になったかもしれない。
また、デフスポーツの現場で欠かせないのが手話の存在だ。言葉は写真に直接写らないが、手話は写る。
そういう意味ではデフスポーツの魅力は写真に直接的に写ることもある。
掲載したのは400mハードルの試合後に石本龍一朗が高田裕士から激励を受けているようなシーンだ。
恥ずかしながらジェスチャーと手話の境界線が分からなくなることが何度かあったが、なんであれ視覚的
に表現できるということは写真にとってはプラスに働く。
このシーンの他にも今大会は温かい雰囲気に包まれていた。心からスポーツ楽しんでいる選手達、仲間と
称え合うスポーツマンシップ、初めて手話を使う人の楽しそうな表情。それらもまたデフスポーツの大き
な魅力として心に残った。
デフを撮るのは難しいのではないか。最初はそう思っていたことも、現場に来れば魅力的なヒントが散ら
ばっている。冬の始まりの良い天気にも恵まれた。自分の中での新しい発見はまたその競技を撮りたいと
思わせる原動力になり得る。来年行われるデフリンピックが俄然楽しみになってきた。
■カメラマンプロフィール
撮影:長田洋平
1986年、東京出身。かに座。
早稲田大学教育学部卒業後、アフロ入社。
2012年ロンドンパラリンピック以降、国内外のスポーツ報道の現場を駆け回っている。
最近では平昌オリンピック、ロシアW杯を取材。
今年の目標は英語習得とボルダリング5級。
★インスタグラム★
アフロスポーツ
1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。
各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。
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