都医・尾﨑会長、後期高齢者と医療費激増の2025年に所感「運命はそれぞれ変わっていく」
東京都医師会は1月14日、都内で定例記者会見を行い、尾崎治夫会長が年頭の所感を述べた。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」。尾﨑会長は冒頭で「後期高齢者の増加と医療介護費の激増に対し、その財源はどうなっていくのか」と切り出し「医療・介護費は増加が予測されているが何とか抑えていこうという流れ。しかし、前期高齢者と後期高齢者の1人あたりの医療費の国庫負担は約4倍、介護費の国庫負担は約10倍。さらに85歳以上の約半数の方はフレイル状態、約半数の方は認知症を発症すると言われ、入院・在宅・外来医療、介護などの状況が変わってくる。そうした時に財源の縮減を行えばいいかというと、医療・介護の質が落ちてしまう」と危惧。
「医療費の財源を見ていくと、所得税と法人税は景気によって左右される。皆さん反対するかもしれないが、安定的な財源を考えると、今すぐは無理だとしても消費税を考えていく必要があるのではないか」と私見を述べた。
後期高齢者の増加を見据え「風邪をこじらせて肺炎や重篤な合併症を起こす、ちょっとしたことで転倒して骨折する、心臓の機能が低下したり動脈硬化が進むと軽い心不全や脳梗塞を起こす方が増えていく。現状でも救急要請の約半数は高齢者であり、軽症患者が多いという特徴もある。地域の二次救急病院が頑張らないといけないが一昨年は約半数、昨年は7~8割が赤字経営で東京の二次救急の病院は危機に陥っており、全国一律の診療報酬に東京は非常にあえいでいる」と警鐘を鳴らす尾﨑会長。
「東京以外では2025年までに外来患者数が、2035年には入院患者数がピークを迎え、在宅医療はすべての都道府県で2040年以降も増え続けると言われている。一方、東京は人口があまり減らない中で高齢化が進み、入院・在宅・外来医療すべて2040年以降まで増え続け、そこは他の道府県とまったく違うところだ」としたうえで「医療介護の世界では、2025年を起点として47都道府県の運命はそれぞれ変わっていくだろう」と予想した。
「大多数の道府県で過疎化が進むが、東京は全国の中でもいろいろなものが集中し、違った運命をたどることになる」として「今までは全国一律で医療・介護費の配分を考えて財務省、厚生労働省、日本医師会などが中央集権的に議論してきた。今後は都道府県、あるいは道府県の中でも大都市とその周辺で運命が変わる中で都市型医療をどうするか、人口減少の中でどうするかを自治体や医師会で議論する流れがないと、東京の医療の舵取りは難しくなる」と断言。
「私は昔からいろんなことを地方分権でと考えていたが、医療は今こそそれぞれの都道府県で、“今後どういくことが起きていくのか” と5~10年先を予測しながら考えていくべきではないか。それに基づいて、必要な財源を分配することを議論するのが国や日本医師会の役割になるのではないか。今後はこういったことが起きていくので、5~10年先を見据えた議論を日本全国で展開していくことが必要。東京都医師会はそうした流れの元にこれから活動していきたい」などと結論づけた。