名優松重豊さんが監督脚本主演の三刀流!『劇映画 孤独のグルメ』で、とにかく腹が減った!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 昨日(21日)から四宮由佳プロデュース「どらきゅらぁズ」が始まりました。がっつり俳優をやってますので、良かったら天才子役からワイルドなおっさん、いやお弁当おじさんに変貌した黒田を見に来てください。26日までやってます。

 では今週も始めましょう。

黒田勇樹

「ドクターX」、「グランメソン」と「人気シリーズの映画版」が、ひしめく昨今。なんというか、本作を入れて、この3作は特別な扱いなんですよね。

 これから、そうなっていく可能性もありますが、例えば「相棒」とか「コナン」とか「風物詩的な劇場版」とか、「最終回は映画で」みたいな商法を前提に作られたものとは一線を画している気がします。

 何年も「TVドラマ」というパッケージで作っていたものを「映画」に、コンバートする。
 長年のファンたちのイメージや期待に応えなければいけない部分と、映画にすることの意義。
「駄作」と、言われてしまえばシリーズ全体の評判も落としかねない重圧があったはずです。

 この『劇映画 孤独のグルメ』は「おっさんが飯食っているだけのドラマを映画化した作品」なので「天才外科医」も「三つ星シェフ」も出てきません。見劣りするように感じますが、作品のできた経緯や、出来上がった画面を見ると「ああ、そういうのの横で戦って勝ってやりますよ」という“気概”が、ひしひしと伝わってきます。

 ポン・ジュノに頼んで断られたから松重さんが自分でメガホン取った逸話とか、主題歌の甲本ヒロトさんとのエピソードとか、キュンキュンします。

 ストーリーは、究極のスープ探しが中心になるのですが、その中で世界各国を巡り、色々な人や料理と出会っていきます。
「全然、孤独じゃねぇ!!!」と、ツッコミたくなりますが、そこを補ってくれているのがこのシリーズ最大の「モノローグ(心の声)を、つけまくる」手法。
 舌も胃袋も、誰とも完全に共有することは出来ませんもんね。食事は最後、孤独なんです、その後のトイレも。そして、その手法が発展させられ「人とのドラマにモノローグをつけることを、観客がすんなりと受け入れられる」、まさに「“劇”“映画”」に進化させていました。

 一応、批評的な目線で見ると「こういう原作やシリーズを背負わずに、松重さんが作る作品はどんなものになるんだろう」とワクワクするような「映画としては初々しく見える部分」もいくつかありました。剣の道と同じで「素振りを続ける」のと「1人、斬る」をは全然違っていて「1本、撮って公開した」この経験で、その内、和製クリント・イーストウッドみたいになってしまうんじゃないかと、期待が止まりません。

 甲乙つけるもんじゃないですが「グラン〜」と「孤独〜」には「パリ」と「料理」という、共通点があり「パリの描写は、グラン!」「料理は、孤独に軍配!」

 筆者のエンゲル係数が低い所為か、きれいに盛り付けられたフレンチより、うっすら汚れた器で出てくる街の料理たちのほうが美味しそうに感じました。

 途中というかほとんど料理の説明と感想になる心の声が、ラストでもう一度、ややこしい味の描写ではなく「腹減った」「うまい」に、戻ったのも、この「美味しそう勝負」の勝因だったのかもしれません。

 ああ、腹減った。帰り道では、昼飯選びのモノローグが止まりませんでした。
 是非、皆さまもお腹を減らして劇場へ!

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