視えないものが浮かび上がる!映画『君の忘れ方』の、この表現が凄い!【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
こんにちは、黒田勇樹です。
2月11日から始まる、三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュースvol.18
「LALALA羅生門/ドララ羅生えもん」が絶賛稽古中です。
稽古を始めてみたら、狂気が色濃い作品になってきました。タイトルから察する人もおられたかもしれませんが、オムニバス形式です。ご興味のある方はぜひ。24日までですが配信公演もありますので!
では今週も始めましょう。

芸術家の、オノ・ヨーコさんが椅子などの家具を全て半分にした作品を展示したときに「残り半分を想像することが大切」といったことを仰ったとか。
今回、鑑賞した映画は坂東龍汰さん主演、大切な人を失った忘れられない悲嘆(グリーフ)を抱える青年を中心とし、グリーフケアをテーマとして描かれる物語。
とりあえず「大切な人」を、演じるヒロイン役の西野七瀬さんがひたすら可愛かったです。
主演が、まごうことなく美男美女なので「お涙頂戴のこってりラブロマンス」だったり「グリーフケア」という活動を啓蒙するような…表現が難しいけど「映画の皮を被ったプロパガンダ」だったら「どっちにしても苦手なジャンルだ。合わせ技だったら最悪」と、穿った気持ちで席についたのですが、全然そんなことはありません。純然たる骨太なヒューマンドラマでした。
中でも目を引いたのが、その描き方で“引き算”が、凄い。ほとんどのドラマティックな出来事が「その前後」を、描くことで表現されていきます。
冒頭のヒロインが亡くなるシーンも、バスでおばあさんに席を譲る場面の次は、もう葬儀の場面に移ります。
でも、なんかすごく悲しい。
最近の日本のこの手の映画は、これでもかというほど事故のシーンを派手に描写して衝撃とか感動を呼ぶ手法が多く見られますが、この作品は真逆と言ってもいいでしょう。
「ない」ことで、視えてくるところが沢山ある素敵な作品でした。
一番痺れたのは、主人公がヒロインの遺影を作るシーンの演出。
PCの画像編集ソフトで、彼女と自分の2ショット写真を切り抜き、背景を変えて作っていきます。やったことがある人にはわかると思うのですが、彼女の顔を四角で囲んでトリミングして背景を変えるだけで済む、単純な作業。
主人公は、まず隣りにいる自分の姿だけを消します。これは、手間だけを考えれば、全くやる必要がない工程。
でも、映画としてはめちゃめちゃ必要だった!
半分!! ヨーコの言ってた“半分”ですよ!
冒頭の、この事故の描写と画像のくだりで、がしっと心を掴まれました。
重いテーマですが、どこか救いがあるというか、優しいお話なので、是非、皆様劇場でご覧下さい。