引退発表の“大井の帝王”的場文男が「騎手については精いっぱいできすぎたくらいできた」と語りつつも「今一番やりたいことは競馬に乗って勝ちたい」

ファンや関係者への感謝の言葉を繰り返した的場

 また数々のビッグタイトルを手にしてきた的場が唯一勝てなかったのが東京ダービー。実に2着が10回とあと一歩だった。同レースで一番印象に残っている馬としては1993年に騎乗したブルーファミリーの名を挙げ「2着じゃないんですけど、ブルーファミリーという馬が7戦7勝で羽田盃まで来ていて一本人気だった。ファンに応えないといけないという感じでいたんですが、癖のある馬だったので外枠希望だった。2000メートルだと外枠でも1コーナーに入るまで真っ直ぐだったので位置が取れるが、当時、東京ダービーは2400メートルだった。3コーナーのカーブからスタートなので一番外枠は不利だった。当時は外枠希望ということができた。今はできない。今のように外枠希望ができない時で真ん中くらいから出たら勝てたんじゃないかと思う」と当時の状況を振り返った。この時、ブルーファミリーは大外枠を克服できず5着に終わっている。

 的場は昨年2月にヒザを負傷。このケガが引退の理由となったのだが「普通に生活するには関係ないが。2月頭にケガをして10日くらいで乗れるかと思ったが、いい時はいいが、ちょっとひねったりするともう歩けなくなったりした。5か月休んで7月の初めに騎乗したが、ゲートを出る時にヒザが痛くて突っ張れなかった。“ああ、これはダメだな”と思った。騎手はやっていけないのかなと思った。靱帯は骨折よりひどくて、元通りにならない」と明かした。

 今後については「騎手については精いっぱいできすぎたくらいできた。騎手に関しては未練はない。これからは大井競馬場を応援していきたい。スタンドにも来て応援したい」と語る一方で「今一番やりたいこと」を問われた際には「やっぱり今まで51年間騎乗してきて、やりたいことは競馬に乗って勝ちたいということ。でも、もうヒザが悪いので。何回も言いますが、皆さんのお陰でここまで乗れてこれたので感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。

 ファンに対しては「ファンがあっての競馬。ファンがいっぱい入ると僕らもうれしい。大井競馬場はいい場所にあるのでお客さんもたくさん来てくれる。そういうのが力になって長く乗れたと思っている。コロナの時は観客がいなくて、競馬に乗っていてもガッツが出ない。精いっぱいの騎乗はしましたけど、やっぱりお客さんのいない競馬はちょっと魅力がないなと思った。大井競馬場は最高の競馬場かなと思っています」と改めて感謝の言葉。