ムード歌謡、初めての恋…タブレット純「ブレずにやっていれば、何となく道が開けていく」

「ここは行けそうだなというところには変な執念があるんです」と純

それが生きがいなので、どうしてもじっとしていられない

 怒涛のような人生にはさまざまな人物が登場するが、出会いの根底にあるのは自身の行動力だと分析。

「そんなに自分からグイグイ行く人間ではないと思うのですが、引っ込み思案で人の会話には入れないけど、独自の調査には異常な行動力があって思い立ったらすぐ動く。相撲取りが好きになると過去を調べるために神田の古本屋街に行くとか、マヒナスターズに加入する経緯にしても、普通はメンバーの住所を知ってすぐに訪ねていこうとは思わないかも(笑)。

 何事も過去のことに興味が止まらない。それが生きがいなので、どうしてもじっとしていられないというのがずっと続いています。いまだにまったく同じようなことをしているので、手がかりを見つけて、そこから調査していくことが好きなのかもしれません。この仕事を始める前からGS研究家の黒沢進先生と文通していて、その頃は黒沢先生にかなり依存していので、先生を喜ばせるために調査して “こういう発見がありました” と報告することに全力を注いでいたので」

 無類の調査好きと行動力を示すエピソードとして、例えば取材日の数日前にもこんなことがあったそうだ。

「舟木一夫さんの生家が分かったので、取材費は出ないけどふと思い立ってひとりで名古屋に行きました。結構古い街並みが残っていて、荒物屋(日用雑貨を売る店)に入ったら “昔、隣の人が舟木一夫の同級生だった” という話を聞いて。魚屋だというので調べてお店の前まで行ったら、閉まっていたので一回帰ったんですけど “やっぱり電話をかけてみようかな” と思って(笑)。かけてみたら娘さんらしき人が出て、ご主人につないでもらって “入っていいよ” ということになりました。

 結構諦めも早いんですけど、ここは行けそうだなというところには変な執念があるんです。迷惑をかけない程度にとは思っているんですけど、そこまで好きでわざわざ田舎町に来てという熱意が伝われば、一期一会のいい出会いがあったりするのが、ある種の旅の面白さみたいなところはあります」

 身を削るようにして書かれた『ムクの祈り』は発売直後に重版が決定。現在も大きな反響が寄せられるという。

 純は「どういう反響があるのか怖かったんですけど、意外と “何度も読み返しています” という方が多くてうれしかったです。ある程度赤裸々に書いたこともあるのかもしれませんが、“その日のうちに全部読みました” という声が結構あったので、少なくとも興味深く読んでもらえたのかなと。作家の高橋源一郎さんもおっしゃっていたのですが、自分のことを書くというのはすごく難しくて。ちょっとしたいい話を自慢のように捉えられる怖さもあるし、かと言って自虐や露悪に走ってもいけないのですが、そこは意外と素直に書けたような気がしています」と喜んだ。