ムード歌謡、初めての恋…タブレット純「ブレずにやっていれば、何となく道が開けていく」

ヘルパーとして生きるか、東京に出ていくかの瀬戸際だった
人生に登場するさまざまな人物の中で、特に不思議な存在感を放っているのがかすみちゃんだ。彼女は純にとって一体どのような存在だったのか。
「人類を通じて初めて付き合うことになった人で、結構いろんなところを旅したし、ずっと付き合っていく人だと思っていました。その人がいたからさらに行動力が出てきたし、男として何度も頑張ろうとして、見た目でもひげを生やしたり(笑)。自分の中で唯一 “男” になった時期という気がしていて、思春期に彼女ができた男の子のように “いろいろ頑張ろう” というふうになったのは、彼女のことがすごく好きだったんだろうなという思いはありました。今となっては幻のような人というか……。
考えてみるとうまくいかないようにできていたというか、あんまりお互いに自分をさらけ出せなかったのかもしれない。10年近く付き合ってたんですけど、最後まで彼女の本質を分からなかったのかもしれないなって。その分、ずっと恋愛をしていたのかなとも思うんですけど、だからこそ自分のだめなところをさらけ出せなかった。晩年は僕にお酒の毒が回っていたこともあって、何かの拍子に怒って後で “何を怒ってたんだっけ” みたいな、そういうことに対する懺悔の気持ちもあります。時が経っていつかこの本を読んでくれた時に、“そんなふうに思ってたんだ” と思ってくれればいいなという感覚はあったかもしれません」
確かに、誰しも過去の恋愛や人間関係で “何であんなことをしてしまったんだろう” という後悔や、もう会うことのない人に対して思いを馳せることはあるだろう。
「精神的に合っていたんだろうなと思う分、思い入れがあっていまだに夢に出てくることもあります。正直言うと相模原で結婚してヘルパーとして生きていくか、東京に出ていくかの瀬戸際だったんです。その時にやみくもに東京に出てしまって、“捨てられた” という思いがあったと思うんですけど、東京に出てからも度々来てくれて、ゴミ屋敷のようになった部屋を片付けてくれたり……。実は、お別れして大分経ってから一回だけ会ったんですけど、その時も分かりあえずに終わってしまったので」