武田真一アナ、出前研修で「育業」の大切さ伝える「子育ては楽しくてやりがいのある仕事」

育業は「当事者だけでなく、周囲を取り巻く組織や会社、社会全体のメリットがすごく大きい」と武田さん

とにかく子どもをかわいがりました。それこそ舐めるように(笑)

 自身が子育てしていた頃との違いを「一番違うなと感じたのは、“育業することは当事者にとっても会社にとってもいいことだ” というマインドが広がり始めていること。育児だけでなく、病気や介護など皆さんが持っているバックグラウンド、一人ひとりのあり方や多様性を尊重したうえで、会社や仕事を考えていこうというふうに社会が変わりつつあることに驚きました。すごく素晴らしいことだと僕は思いますし、社会がいい方向に向かっているなということを実感しました」という武田さん。

 武田さんが子育て中にやっておいてよかったなと思うことは?

「とにかく子どもをすごくかわいがりました。それこそ舐めるように(笑)。上の子にはたくさん読み聞かせして、アナウンスの練習にもなったんですけど本当に楽しかったです。何か読んであげると “キャッキャ” と喜んだり、怖い話をすると “怖ーい” と言ったり、ゲラゲラ笑ってくれたり。あの瞬間はもう戻ってこない、とてもかけがえのないものだったなと思います。下の子が小学校の時には “親児(おやじ)の会” に入って、みんなで田植えや稲刈りをしたり、ヨットに乗りに行ったり、校庭で日食を見る会を開いたり。

 子どもを通して地域の人たちと仲良くなって、自分の世界が広がったことはとてもよかったですし、そこで知ったことや感じたことは仕事にもすごく役に立ちました。僕は転勤もいろいろしたんですけど、家族がみんな一緒に来てくれて、ほとんど単身赴任をしたことがないんです。沖縄に異動した時は、日が暮れる頃にみんなでビーチに行って、スーパーで買ってきたお寿司やケーキを並べて誕生会をやったり。すごく大事な家族の時間を持つことができました」

 そんな武田さんも当時、育業しなかったそうで「身近にいる妻の様子を見ていて、頭では24時間子どもと向き合う大変さが分かるんですけど、身をもって体験していないというのが今は負い目ですね。僕は家を出れば職場でみんなと楽しく仕事することができて、“今日はちょっと遅くなるね” と言ってビールを飲みに行くこともできますけど、子どもを抱えているお母さんはそうはいかないですよね。当時はそれが当たり前だと思ってましたが、もっと違う経験をしておくべきだったなと今は思っています」と大いに反省しているという。

 NHK時代には管理職だったこともある武田さん。管理職の立場から見た育業とはどのようなものだったのだろうか。

「管理職を経験したのは会社員時代の最晩年です。その頃も育業する職員はたくさんいましたし、一時的に人員をどうやりくりするかという課題はあったかもしれませんが、何とかする体制は取れていたと思います。長い目で見れば、育業したいという職員に対する理解はだいぶ深まりましたよね。以前はプライベートなことを仕事に持ち込むのはよくないと、僕らが勝手に思っていたところがあるのですが、例えば女性のアナウンサーが “しばらくお休みに入ります” と言って画面からいなくなると、視聴者の皆さんがすごく温かい反応をしてくださるようになって。そのことによって、企業イメージの向上につながるんだなという実感がありました。

 一緒に番組をやっていた女性のアナウンサーが産休に入ったこともありますが、そのことで業務が立ち行かなくなることはなく、みんな “頑張ってね” という感じで温かく送り出す雰囲気でした。世の中が変わったのか、会社が変わったのか、視聴者の皆さんが変わったのかは分かりませんが、そのいずれとも言えると思います。もちろん育業する方も前もって計画的に相談していましたし」