歌手60周年の加藤登紀子「ヤバい人が大好きなの(笑)」昭和の歌姫・美空ひばり、中島みゆき、中森明菜との絆を語る

美空ひばり、中島みゆき、中森明菜…昭和を彩る歌姫たちとの絆
そんな“ピクニック”の中で、歌手人生を語るうえで欠かせない、いくつもの出会いを果たしてきた。
「Yaeがもうすぐ生まれますよというころ、事務所の皆と近くのとんかつ屋さんでお昼ご飯を食べながら見ていたテレビで、中島みゆきさんに一目ぼれしちゃった。すごい才能だと思ってね。すぐに関係者に電話して、叶うならこの人と何か仕事がしたいと言ったところ、しばらくして、みゆきさんが札幌から東京に来たときにうちを訪ねてくれたんです。
雪のように肌の白いお嬢さんでね。ギターを持ってきてくれて、“できたばかりの曲なんですけど”と言って『夜風の中から』を歌ってくれた。それがデビューアルバムを出す前かな。それから3年ほどして、彼女が大ヒットを連発しているころに再会して、私のために曲を書いてくれませんかとお願いして生まれたのが『この空を飛べたら』でした」
『百万本のバラ』が大ヒットした1987年。中森明菜に『難破船』、石原裕次郎に『わが人生に悔いなし』を提供し、これもヒット。
「明菜さんも、テレビを見ていて面白い子だなと思ったのが最初(笑)。明菜さんが誕生日をお祝いされていたんですけど、面白くなさそうな顔で“誕生日って何がうれしいんですか? 何かいいことでもあるんですか”って言うの。すごいこと言うなと思って思わず拍手しちゃって(笑)。それがきっかけで友達になったんですよ。そのころ、ちょうど自分で『難破船』を歌い始めたんですけど、どうも今の私の歌ではないなと感じていて、歌っていてもどこか他人事みたいに感じてしまっていたんです。でも今22歳の明菜さんなら…と思ってお声がけしたら、たちまちレコーディングということになって。それからずっと大切に歌ってくださっていて」
4月5日に都内で開催される『加藤登紀子コンサート 歌でつなぐ100年』では加藤が愛する昭和の歌姫、美空ひばり、中島みゆき、中森明菜らの歌とともに歌手60周年を彩る自身の名曲の数々を披露。水谷千重子、ミッツ・マングローブ、ピアニスト五条院凌というスペシャルゲストとの異色のコラボレーションも見どころとなっている。
「“3魔女”が揃ったわね、って言ってます(笑)。好きな人に声をかけていたら、見事に面白い人ばかり揃っちゃった」
現在81歳。世代を超えて仲間を増やし続けられる秘訣とは。
「遠慮しないで声をかけるってことかしら。今回、歌わせていただく美空ひばりさんは、ご存命当時からあこがれの大先輩なんですけど、仕事でご一緒しても遠慮しちゃって、なかなか話しかけられずにいて、後からすごく後悔したんですよね。雲の上の人だと自分から線を引いてしまっていたんです。テレビ番組のメイクルームでご挨拶したりとかもあったし、もっと親しくさせていただくことができたかもしれないのに。ひばりさんって、けっこうさみしがり屋なところもあって、遊びに行くとなかなか帰してもらえないなんてこともあったとか(笑)。そんな後悔もあるので、興味がある人には機会があれば積極的にお話したり、テレビやネットで情報収集してみたりしてますね。今、若い方だと新しい学校のリーダーズさんとか。ああいう“ヤバい”感じの人が大好きなんです(笑)」
表現者としての才能に加え、“アウトサイダー”たちをも魅了する器と、衰えぬ好奇心、震災支援をはじめとする社会活動への姿勢。加藤が幅広い世代のアーティストに影響を与える存在となっていったのは当然かもしれない。そんな加藤が「私にとっても大事な出会いを語れるコンサートになると思います」と言う60周年コンサートは、まさに日本の歌の100年をたどる一夜となるに違いない。
(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)