金メダリスト対談 女子柔道・角田夏実×技能五輪・吉⽥陽菜「負けず嫌いなところは同じですね」

部門初の女性金メダリストとなった吉田選手。さらなる高みを目指す。(撮影:蔦野裕)

栄光の瞬間を胸に、さらなる挑戦へ。女性初の世界記録にも意欲

吉田「私自身、今回の金は夢のようでした。表彰式でも、ずっと試合の反省をしていて半ば絶望的な気持ちだったんです。金賞で自分の名前が呼ばれたときは本当に何が起こってるのか分からず、表彰台へ歩きながらも“絶対に夢だ”という感覚でした。受賞後、各所に報告に行くうちにやっと自分の中で実感できるようになりました」

角田「私もパリオリンピックで金メダルが決まって畳を降りるときは、うれしいというよりほっとしたというか、全部のプレッシャーから解放されたような感じでした。直後は実感が沸かなくて、本当にオリンピックで金取ったのかな?と、どこか信じ切れない気持ちがしばらくありましたが、帰国して多くの方にメダルを見ていただいて、やっと本当に私はオリンピックで金メダルを取ったんだと実感できました」

吉田「今後は、2026年 国際大会への出場権を獲得するために今年10月の技能五輪全国大会で2連覇を目指します。そして11月に台湾で開催されるアジア大会でも良い結果を出して、国際大会へ弾みをつけたいと思っています。国際大会では、この職種で日本はこれまでにも金メダルを取っていますが、女子選手の金メダルは出ていないので、世界初を目指したいと思っています」

角田「世界を目指すって本当に大変なことですよね。私も、東京オリンピックでは代表になれず引退を考えた時期もあったので、パリに内定したときから全身全霊で臨んできました。さすがに終わった直後は出し切った感があり、ケガもあったので、今回のグランドスラムも悩みましたが、試合に出たいという気持ちが途切れることはありませんでした。オリンピックを経て、柔道って楽しいなと改めて感じたんです。今、子どもたちと触れ合う機会をたくさん頂いていますが、柔道をやってみたいと言ってくれる子や、柔道が大好きと言ってくれる子がとても多いです。子どものころの私はそうではなく、大きなケガで手術して1年柔道ができなかったときに、改めて自分にとって柔道がどれほど大きな存在かに気づかされたので、子どもたちが“柔道が大好き”と言って練習している姿を見ていると、すごくうれしいんです。だから今後は、より積極的に、その気持ちを応援できるような活動をしていきたいと思っています」

吉田「私も技能五輪を目指す方、とくに、まだこの職種では少ない女性選手や後輩たちの良い刺激になれたらうれしいです」

角田「自分に自信を持ち、強い心と体を育むことは女性としても大事なことだと思います。私は子どものころ本当に泣き虫だったのですが、柔道をやることで心身も鍛えられ、少しずつ自分に自信がつくようになりました。体格に似合う服を見つけるのが大変なときもありますが(笑)」

吉田「頑張った経験って宝物ですよね。大会で失敗したとしても頑張った事実は消えない。間違った頑張り方だったかもしれないし、上手ではなかったかもしれないけど、精一杯やったという事実があれば振り返りもできるし、新たなことに挑戦するときに同じ熱量を思い出すことができるはず。仕事でも趣味でも、本気で頑張った経験は人生において代えがたい宝物になると思います。それに頑張っている姿は案外、人に見てもらえていたりします。それがすごく力になるので“見守ってるよ、応援してるよ”という声はどんどん頂けたらうれしいです」

角田「確かにそうですね。私も多くの方に支えてもらい取れた金メダルだと日々感じています。あきらめなければ、いろいろな人が手を差し伸べてくれるので、頑張りたいという気持ちがあるなら、あきらめずに夢や目標に向かっていってほしいと思います」

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)