イーロン・マスクの弟キンバルも惜しむ日本の農業後継者不足 最先端コンテナ農場で高い技術を次世代へ

 世界的起業家イーロン・マスクの弟キンバル・マスクが現在、アメリカで農業革命を起こしている。2016年、キンバルと起業家トビアス・ペグスがブルックリンで立ち上げたSquare Roots(スクエア・ルーツ)は、光、温度、湿度といった気象条件を自動調整し、少ない環境負荷で無農薬、遺伝子組み換えフリーの作物を育てることができる屋内農業プラットフォームだ。キンバルたちが海外初展開の場所に選んだのが、ここ日本。最先端のサステナブル農業を目指す彼らが日本に見出した可能性とは。

 

テック界の大物キンバル・マスクがブルックリンから始めた持続可能な次世代農業

「無農薬で、遺伝子組み換えでなく、環境負荷も少ない安全で新鮮な食べ物」をキンバルとトビアスは「リアルフード」と呼ぶ。世界的な人口増加や都市への人口集中、気候変動による作物不足といった懸念が高まる中、そんな “リアルフード”を都市で地産地消するというSquare Rootsのコンセプトは多くの注目を集めている。

 2016年。最初にSquare Rootsのコンテナ農場が置かれたのはNY・ブルックリンの駐車場の一角。コンテナ内部にはハーブや葉物野菜がびっしりと生えた垂直式のモジュールが並ぶ。農薬や殺虫剤を使わない水耕栽培だが、水を再利用するため使用する水量は一般的な畑の20分の1。環境負荷も低く、土壌汚染や害虫被害の不安もない。

長時間、長距離を運ばれてくる野菜とはひと味違う新鮮さも大きな魅力だ。広い農地を必要とせず、都市の限られたスペースに設置されたコンテナから近所のスーパーへ、文字通りの“とれたて野菜”が届けられる。出荷される生産物はすべてトレーサビリティを確保。QRコードで生育者や生育方法などの情報をたどることができる。ちなみに一部地域では、大手食品流通企業との連携により配送センター内にコンテナ農場を設置。農場が直接ラストワンマイルにつながっている。

 生育環境は、作物ごとに必要な温度や湿度、光量、栄養バランスなどのデータを分析した栽培レシピをもとに、AIとセンサー技術により自動調整。収穫のタイミングをコントロールしてフードロス対策につなげたり、自分に合った働き方を工夫することも可能だ。 Square Rootsでは生産者を次世代型農業のアントレプレナーとして迎えており、その多くが農業未経験者や若い世代だというのもうなずける。

LEDライトが近未来的…Square Rootsのコンテナ農場

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