向井理『パリピ孔明』は「20代だったらできなかった」反響に驚き映画化は「ご褒美」

撮影・蔦野裕 ヘアメイク・晋一朗 スタイリスト・外山由香里

「20代のときだったら、この孔明役はできなかった」と語る理由

 現代の渋谷に、諸葛孔明。違和感満点のはずが、なぜか自然と「こんな軍師が自分も欲しいな」と思えてしまう。実は5キロ近くもあるという孔明の衣装。向井も「まさかこの格好を3年もするとは(笑)」と苦笑する。

「三国志の映像化作品はたくさんありますし、多くの俳優が演じてきましたけど、その中でもやっぱりこの“孔明”は独特ですよね。この孔明を演じてから“ああいう役もやるんだね”とよく言われます(笑)。僕自身、俳優としていろいろな役を演じていきたいと思っているので、一つ引き出しが増えたかなと思っています。コミカルな役どころはこれまでもやったことはあるんですけど、孔明はこれまでとは違うやりがいがありましたね。コミカルなキャラは、自分からボケに行くパターンと、真面目にやっているからこそ滑稽に見えるパターンに大別できると思うんですが、孔明は後者のタイプ。連ドラのクランクイン前にも渋江監督と“これだけビジュアルが強烈だと、僕からボケに行くと却ってつまらなくなるのでは”という話をさせていただいたんです。監督も同じ意見で、結果的に“本人は一生懸命にやってるんだけど、そのギャップが見ていて面白い”というキャラを見せていくことができました」

 今では向井のはまり役となった孔明だが、本人は「20代のときだったら、この孔明はできなかったと思う」と言う。

「コメディーに対するとらえ方が年々変わってきたということもありますが、積み重ねてきた芝居上のテクニックがあって乗り越えられたことも多かったんです。キャラクター自体はそれほど複雑ではないんですが、台本にない部分、歩き方や服のさばき方、話し方という細かな部分はとくに、今までの経験で得た役者としての技術がないとできなかったことも多かったと思います。ただ、そういうテクニックだけで芝居をするのは、僕は好きじゃないんです。一見、演技が上手に見えたりもするんですけど、僕自身は、そうはならないようにと常に心に止めています。とはいえ信念を曲げてもやらなきゃいけないときもあるじゃないですか。今でこそ、全体を俯瞰して“僕の小さなプライドなんて関係ない”と思えるようになりましたけど、20代のころは、芝居への信念が絶対に作品を良くするんだという思いで、監督や共演者と意見がぶつかったこともありました(笑)」

経験も技術も、感情を体現する表現力も備えた、まさに“不惑”の40代。「学ぶことで才能は開花する」という諸葛孔明の名言通り、俳優・向井理はこれからも才能を開花させ続けるにちがいない。

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)