会社も個人も常に高い目標を持つことが大切「社長の器以上に会社は大きくならない」 株式会社メディアフラッグ 代表取締役社長 福井康夫
三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)、セブン-イレブン・ジャパンという大企業でサラリーマンをしていた福井さん。セブン-イレブンでは店長の経験も。起業時にはそこで培ってきたノウハウ、人脈が大いに役立ったという。コンビニ店長が、その知識と経験を武器に、東証マザーズ上場企業社長になるまで。
起業したきっかけ。
「大学を卒業し、就職したのが三和銀行でした。ただ、起業した父親や商売をやっていた祖父を見て、自分もいつかは社長をやりたいなという思いはあった。そこで、銀行は一番勉強になるんじゃないかという事で、就職先に選んだというのはあります。その後、セブンイレブンに入社し、スーパーバイザーという業務を経験。これは地域の店舗を統括し、指導する業務で、そこで流通に関するさまざまな事を学びました。その時感じたのは、キャンペーンや新商品の売り場づくり、また発注作業などが、きちんと徹底されているという事。その理由はPOSデータによる管理と、スーパーバイザーという仕組みだったんですね。でもそれをできるチェーン店は、実際セブンイレブンぐらいしかなかった。そこで、それらをアウトソーシングでできないかと調べた事をヒントにし、営業活動のリポートを上げるマーケットウォッチャーというシステムを作り上げ、セブンイレブンのノウハウとそのソフトを武器に35歳の時に起業しました」
店舗店頭に特化したマーケティング支援の会社を立ち上げた福井さん。実際の事業内容は。
「基本は流通業、メーカーの立場でどうやったら物が売れるのかというところで、ミステリーショッパー(覆面調査)、マネキン・ラウンダーの派遣、デジタルサイネージで商品のアピールなどです。ラウンダーというのは、メーカーの立場で、自社の商品の売り場を整えるとか、POPをつけるとか、売り場を目立つ場所にしてもらうように交渉するといったことを代行する仕事です。これが実はすごくニーズが高く、全国で50万件ぐらい対応しています。うちの会社は私以外にもセブンイレブン出身者が多く、ほかにも流通業関係出身者が非常に多い。小売業、サービス業、流通業をよく知っている人間が、そういったアウトソーシングサービスをやっているというのが、一番大きな特徴。単なる人材派遣ではなく、現場をよく知っている会社だというのが一番の強みです。またグループ会社のimpactTVは、年間13万台を出荷しているサイネージの国内シェア№1です。サイネージといっても、売り場に特化した動画のサイネージですが、常に30万台弱が店頭で動いていて、70~80%と圧倒的なシェアを誇っています」
順調に起業したように見えるが、苦労も多かったという。
「サラリーマンだった時の貯金で起業したので、そんなにお金があったわけじゃない。ですから最初の1年間はシステムを作ったり、流通のノウハウでコンサルみたいなことやったりしつつ、勝負をかける時に、外部から出資をしていただきました。その後も、タリーズコーヒー創業者の松田公太さんや、ブックオフ創業者の坂本さん、レッグスという広告代理店にも株主になってもらった。最初は大変でしたが、そこで軌道に乗り出すことができたかなと思います。振り返ると、自分の起業人生は、いろいろなご縁に恵まれ非常にラッキーだったと感謝しています。松田さん、坂本さんをはじめ、多くの方に支えられ、これまでやってこられた。事業自体は、山あり谷ありで、本当にしんどい時もたくさんありますが、人に恵まれたという意味では、運がよかったと思います。事業って、志が低かったり信念が足りなかったりすると、うまくいかなかったりすることがあると思うんです。実際私もそういうところがあった。しかし、今は13年やっていて、自分自身が成長しないと会社はうまくいかないと分かります。ですから、今はしっかりとした高い目標を持って取り組んでいます。今後は、遅くても2020年までには、東証一部に上場し、2030年くらいまでには、今の10倍くらいの規模の会社に作り上げていきたと思っています」
株式会社メディアフラッグ
【所在地】〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-12-19 東建インターナショナルビル10F
【URL】http://www.mediaflag.co.jphttp://www.mediaflag.co.jp
【設立】2004年
【資本金】300万円
【社員数】114名(アルバイト除く。登録スタッフ数は25万人を突破)
【事業内容】流通・サービス業に特化した、インターネット活用型アウトソーシング事業。 営業支援事業(消費財メーカー向け営業アウトソーシング)。流通支援事業(流通・飲食本部向け営業アウトソーシング)。システム事業(マーケティングに関わるシステム開発およびASP展開)。ストア事業(流通店舗経営及び流通人材派遣)。2012年には東証マザーズ上場を果たす。
起業をする人・考える人への応援メッセージ
私自身、ビジネスマンとしての能力は中の上ぐらいしかないと思っています。ただ、その自覚があったからこそ、普通の35歳サラリーマンから起業して、何とかここまでは来ることができました。この後の会社の成長は、私の成長にかかっています。社長の器以上に会社は大きくなりません。大切な従業員のため、より良い社会のために、自らが成長できるようこれからも一生懸命働きます。今の若い皆さんは、私よりもずっと素晴らしい能力をもった人がたくさんいます。一方、能力以上に、想いや信念を持つこと、そのために一生懸命働くことも大事なことだと覚えておいて欲しいと思います。起業は何歳からでもできる。志のある人はぜひ挑戦してください。
福井康夫(ふくい やすお)
1968年、千葉県生まれ。1991年に早稲田大学法学部を卒業し、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。土浦支店・神田支店にて融資業務を経験し、流通小売業に興味を持つ。1995年、株式会社セブン-イレブン・ジャパンに転職。約1年間、店長を経験後、スーパーバイザーとなる。神奈川県西部で、延べ約50店舗の指導・教育を担当後、情報システム本部システム企画部に異動し、店舗システム活用推進プロジェクトを担当する。2001年、株式会社セブンドリーム・ドットコムに転籍となり、インターネット通信販売事業立ち上げに尽力。2004年、株式会社メディアフラッグを設立、代表取締役社長就任。2012年に、東証マザーズ上場を果たす。
福井康夫
『コンビニの店長だった私が、上場企業の社長になった今も大切にしている商売の心得』
【日時】10月5日(木)19時〜 【場所】Startup Hub Tokyo
大手コンビニ業界でスーパーバイザーを務め、流通販売やマーケティングのノウハウを生かして起業した福井氏。経営者となった現在も大切にしているビジネスの心得とは。