なぜ社長令嬢がスナック経営者に? スナック「サンライズ」静子ママインタビュー【後編】
“スナック”。この郷愁を誘う響きに、甘酸っぱい気持ちになる人も多いのでは? そこは疲れた人々を癒し、時に励ましてくれる場所。しかし、最近では夜の街から姿を消しつつあるという。しかし一度その魅力にハマったら、通わずにいられなくなるはず。そんな街角の小さなスナックと、ママの人生をご紹介! いきつけのスナックをひとつ持つだけで、人生が豊かなものに。そんな素敵なスナックとの出会いを応援します。
ちゃんぽん、ステーキ、謎のチョコ。何でも出てくるスナック「サンライズ」に行ってみた(学芸大学編)http://www.tokyoheadline.com/183441/
■シングルマザーで4人の子育て
学芸大学の「スナックサンライズ」での饗宴は、まだまだ終わりません。一緒にいるとほっこりする静子ママの笑顔を見ていると、先ほど聞いたママの苦労続きの人生が嘘のようです。この地で運送業を営む裕福な家の社長令嬢として生まれたママは、何不自由なく青春を謳歌していたそうです。やがてハンサムな男性と出会い結婚。その後、スナックサンライズをオープンさせます。
その男性との間に4人の子どもを授かるのですが、妊娠中もママは店で働き続けます。当時はバブルに景気真っ最中で、店の売り上げもよく、ガンガン稼げていたそうです。しかし、旦那さんと離婚。理由については多くは語りませんでしたが、相当なハンサムで、女性にも大変もてていたというあたりに原因の一つがあるのかも知れません。その後は女でひとつで4人の子どもを育てていきました。
■常連さんとのお別れ
バブル景気以降、店の売り上げは全盛期に比べ、ガッツリ落ちました。それでもなんとか切り盛りし、子どもたちのために働きます。しかし、長年の常連さんは年を取り、櫛の歯が欠けるように、店に来なくなります。亡くなられた方も多いとか。
この日、マイクを握る“シマちゃん”も長年の常連ですが「もう、俺しかいなくなっちゃった」と寂しげに語ります。といいながら、カラオケが入るとしっかり歌っているところを見ると、ママと会うことが癒しになのかも知れません。
そんなママも、ひとり娘として、年老いた両親の世話をしながら、子どもたちを一人前に育て上げました。今では、4人の子どもはみな結婚し、孫もいます。
■ママの特技再び
ママにはツイストで踊る以外にも特技があります。それは小皿を片手で2枚持ち、カスタネットのように、リズムに合わせてカチカチとならすのです。そしてさらに、その状態でツイスト。スナックのママの鏡のような、盛り上げっぷり。歌っている方も、見ている方も楽しくなってきます。歌って、皿を鳴らして、踊って、その間にビールを飲む。グラスの空いたお客さんを見ると、女の子にアクションで指示を出し、お酒を注がせる。まったく無駄のない動きに、この道39年のプロ意識と、体にしみ込んだスナックママとしての生きざまを見たような気がします。
■5時に夢中!に出演
さて、店の女の子、お客さんが代わるがわるマイクを握って楽しく歌っていると、シマちゃんが店内に飾ってあるたすきを指さしました。最初から気にはなっていましたが、いわゆるドンキで売っている“今日の主役”的なパーティーグッズだと思っていたのですが、よく見ると「スナックサンライズ静子ママ」とちゃんと印刷されています。よくよく話を聞くと、なんと静子ママ、あのMXテレビの人気番組「5時に夢中」の大人気コーナー「目指せ!場末の歌姫!おママ対抗歌合戦」に出場したことがあるというではありませんか。しかも、年末のグランドチャンピオン大会まで進んだそうです。ママの歌声を聞くと、それも納得です。
■死ぬまでこの地でスナックやる宣言
「目指せ!場末の歌姫! おママ対抗歌合戦」のグランドチャンピオン大会では、惜しくも優勝できませんでしたが、あの番組に出ること自体、スナックのママとして自慢できることだと思います。しかも、自分で応募したのではなく、出演依頼がきたというのですから、本当に素晴らしい。それもこれも、ママがこの地でいい時も悪い時も、あの素敵な笑顔でお客様を39年間迎えてきたからだと思います。ママとそのママに会いに来るお客さんが作る、アットホームな空間。これがスナックの醍醐味ではないでしょうか。ママは言います。
「子どもたちも独立し、孫もできて、もう働かなくてもいいじゃないかと言う人もいる。でも私はこのお店のおかげで子どもたちを育て上げ、親の面倒もみて、自分も生きてこられた。お客様が来てくれる限り、この地で店を続けることが、私にできることだと思っているの」。
あっぱれなスナックのママ人生を見せていただきました。
東京都目黒区目黒本町1-13-1
03-3710-1475
11:00~14:30 19:00~翌1:00
ランチ営業、夜10時以降入店可