久保優太がK-1初代ウェルター級王座獲得【9・18 K-1】
ゴング前、木村は久保に一礼
「K-1 WORLD GP 2017 JAPAN〜初代ウェルター級王座決定トーナメント〜」(9月18日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナ)で行われた「初代ウェルター級王座決定トーナメント」で久保優太が優勝。初めてK-1のベルトを巻いた。
久保は1回戦でかつて同じジムで練習をともにし、兄弟のような付き合いをしていた木村“フィリップ”ミノルと対戦。このトーナメントで最大の注目カードは、前日の会見で木村が久保に対して惜別とも取れるコメントを発したことから、より注目度がアップしたなかでの対戦となった。
試合前のレフェリーによるルールチェック時、木村は久保とグローブを合わせると一礼。2人は初めてコーナーを分かち、試合が始まった。
久保の左ミドル、木村のフックと互いの得意技が交錯する。1R終盤、久保のミドルをキャッチした木村が右フック。久保の動きが一瞬止まる。しかしすぐに左ミドルで形勢を立て直す久保。2Rに入ると久保の左ミドルがさえわたる。木村が距離を詰めパンチを放つと巧みに体を寄せ連打は許さない。
2度のダウンを奪い久保が完勝
2ラウンド終盤、木村が右フックを放ち、2人の体がもつれたところで久保が右のショートフックで1回目のダウンを奪う。トーナメントの1回戦と準決勝は1ラウンドに2回のダウンでKO負け。後がない木村だったが、果敢に踏み込んでの右フック。ぐらついた久保だが、逆襲の左ミドルが木村の右わき腹にぐさり。木村は右のガードを下げロープを背にし、絶体絶命のピンチだったが、久保はとどめを刺すことはせずにゴングが鳴った。
最終の3R。左ミドルを嫌がる木村に久保は容赦なく左ミドルを連発。判定では分が悪い木村が左フックで飛び込むも、かわした久保が右フックを合わせ、この日2度目のダウンを奪う。
立ち上がった木村に久保が左ハイを放つと木村は右目じりをカット。ドクターチェックが入るが試合は続行。木村は最後までKOを狙いパンチを放ち続けたが、ついに終了のゴングが鳴った。
試合後、木村は「今日は大事な日だった。凄く収穫があった」
試合終了の瞬間、両手を広げ声をかけ、木村を受け入れる久保。グローブで目頭を押さえる木村。2人にしか分からない感情が交錯した。
試合後の会見で木村は「自分が思う世界最強の戦士と試合ができて、やっぱり強いなと思った。格闘家として、今日やっと生まれたのかなって思うくらい、ファイターとしていい試合ができたと思う。負けてこんなこと言うのは初めてなんですけど、初めての感情なんでよくわからないですけど。でも、今日は凄いいい日だった。僕はファイターとして生まれて、ファイターとして最後は死ぬつもりなので、これからも僕の心が折れないかぎり、リングに立って戦いというのが本当の気持ち。そういう意味で今日は大事な日だったなって思う。凄く収穫があった」と振り返った。
準決勝では非情なローキックで塚越を撃破
久保は準決勝では1回戦で中国のハン・ウェンバオを破ったKrush-67kg王者の塚越仁志と対戦。久保は塚越が左足に大きなダメージがあるとみるや、徹底したローキックを見舞い2度のダウンを奪い、1R2分34秒、KOで決勝に進出した。
久保「見返してやるという気持ちは凄くあった。またイチからがんばりたい」
決勝の相手はモハン・ドラゴン。モハンは戦前の「一番盛り上がる試合をする」という言葉通り、1回戦の渡部太基戦から豪腕フックを振り回す。左フックの空振りから返しの右フックで1度目のダウンを奪うと左右のフックの連打で2度目のダウンを奪い、1R2分15秒、KOで渡部を沈めた。
準決勝ではメルシック・バダザリアンの負傷棄権により、繰り上がった山際和希と対戦。「1Rでモハンを疲れさせて、2R以降に仕留める」という山際の作戦も、この日のモハンには通用せず、2Rにやはりフックで2つのダウンを奪い、決勝に駒を進めた。
決勝はモハンが序盤、それまでのフックを振り回す戦い方ではなく、ローキックから入るという戦法を選んだため静かな立ち上がり。しかし徐々にモハンのパンチが出始めると一気に緊張感が高まった。モハンはここまでの2試合、途中で失速するかと思われたところから驚異的なスタミナを見せ、勝ち上がってきた。ダメージが積み重なっていてもそのフックは一撃必殺。そのフックを何発も食らいながらも久保は倒れない。そのうちにモハンがフックを空振りしてバランスを崩す場面が目につくようになる。
2R、久保のヒザ蹴りが当たった後に自らのパンチの空振りでバランスを崩し転倒したモハンにダウンが宣せられるが、これは無効に。しかし、モハンのスタミナもピークに達していたか。3R、久保がパンチの連打とヒザによるボディーへの集中攻撃でついにダウンを奪う。立ち上がったモハンにボディーブローの連打を浴びせるとレフェリーがスタンディングダウンを取る。残り時間はもうわずかではあったが、久保はなおも攻撃の手を緩めない。判定とはなったが圧倒的な強さを見せ、勝利を収めた。
試合後の会見で久保は「1回戦のミノルくんは特別な存在で。本音を言えば複雑なんですけど。彼に勝つことができて、自分の中で死にもの狂いでも勝つという、貪欲な気持ちが生まれた。倒れた相手にも蹴り入れちゃうような久保優太に戻れたかなと思う。準決勝では弱点をとことん攻める。足をぶっ壊してやろうというスイッチが入った。決勝は体力がピークに達していて。そういう部分では反省点なんですけど、最後にいけたのは、矢口トレーナーの元で1月からつらいトレーニングをやってきたから」とトーナメントを振り返った。
新生K-1では何度もトーナメントに出場し、その度に優勝候補にあげられながらも芳しい成績を残せなかった。やっと巻いたK-1のベルトに「見返してやるという気持ちは凄くあった。このトーナメントで優勝できなかったら、自分の引き際なんじゃないかなって感じていた。ベルトを取ったからには、またイチからがんばりたい」と話した。