発送電の分離も含めエネルギー政策の見直し議論に着手
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政府は7日、閣僚や有識者、経済界代表らで組織する新成長戦略実現会議(議長・菅直人首相)を開き、東京電力福島第1原発事故を受けたエネルギー政策の見直し議論に着手した。
昨年決めた現行のエネルギー基本計画で、2030年までに14基以上の原発を新設し、発電量全体に占める比率を53%に高めるとした目標の修正が最大の焦点だったが、菅首相は会議で、「新しいエネルギーの活用に向け、パラダイムの転換を実現すべきだ」と述べ、現行計画で“主力電源”と位置付けた原発のあり方を見直す考えを表明した。原発不信を背景に新設は極めて難しい状況にあり、原発比率を30%程度の現状維持とする方向だ。
この日の会議では国家戦略室がエネルギー政策の見直しに関する論点や今後の日程についてまとめた資料を提示し、記者団にも配布したのだが、資料では電力システムに関する重要論点として、注目を集める、発送電の分離を含む電力事業形態の在り方についても明記した。
ただし、現状の原発比率30%を維持できるかどうかは、実は不透明な状況だ。
現在、定期検査を終えた全国の原発が地元の合意が得られず再稼働できない状態にあり、関西や九州など西日本でも、今夏の深刻な電力不足の懸念が広がっている。経済産業省の試算では、停止中の原発を火力発電で代替すると今年度で1.4兆円のコスト増となる。
事故を受け、3月に指示した緊急安全対策を根拠に「安全性に問題」はないと政府は強調するが、その後に菅首相が明確な根拠を示さず、中部電力浜岡原発を停止させたことで、他の立地自治体は「地元に説明できない」としているのだ。
8日には全国の原発立地道県でつくる、原子力発電関係団体協議会の三村申吾会長(青森県知事)は、海江田万里経済産業相と会談し、中部電力浜岡原発以外の運転再開を認める判断根拠の開示などを求める「原子力発電の安全確保に関する要請書」を手渡した。
海江田経産相は「(自治体には国が示した)緊急対策について国が責任を持つとお伝えしている」と応じたが、国の安全基準に不信感を募らせる自治体との間で、事態は膠着している。
原発がこのまま再開できなければ、東電・東北電力管内の問題だった今夏の電力不足は、全国規模となる。経産省によると、関西、北陸、四国、九州など西日本5電力会社で、夏季の予定供給力の11%に相当する880万キロワットの供給力が減少する。この結果、東電や、浜岡原発を止めた中部電への電力融通は困難となる。
電力需要を満たしてなお残る供給余力を示す予備率は、8%以上必要とされる。経産省の試算では定期検査中の原発が再稼働できなければ今夏の予備率は、すでにマイナスに陥っている東電、東北電力管内に加え、西日本もギリギリ。
とくに関西電力はマイナス6.4%。九州電力も1.6%で、西日本5社を平均すると0.4%と、余力はないに等しい。震災や節電の影響で西日本シフトを進める企業も増える中、事態は深刻だ。
電力会社も痛手を被る。原発1基を止めると、代替エネルギーコストで1日で2億円が吹き飛ぶ。
このまま再開できない状況が続けば、来春には全国54基の原発がすべて止まる。資源エネルギー庁幹部は「震災復興と日本経済の足かせになる」と、危機感を募らせている。