世界が愛する初音ミク

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バーチャル・シンガー、初音ミクの注目がさらに高まり、さらに大きなムーブメントに発展しそうだ。初音ミクの今、そしてこれからについて、産みの親であるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の伊藤博之代表取締役に話を聞いた。

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ill. by KEI ©Crypton Future Media, Inc. www.crypton.net

日本のコンテンツを世界に紹介する
初音ミクが、そのかけ橋になれたら

“初音ミク現象”がまだまだ拡大中だ。バーチャル・シンガーの初音ミクが出演する作品は、インターネットを介して、軽々と国境を越え、世界のオーディエンスのハートをつかんだ。「ユーザーが作った音楽や映像コンテンツもたくさんの人に見てもらえる機会も多くなってきたのはうれしいですね」と、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の伊藤博之代表取締役は話す。

 もともとは、コンピュータで音楽を作るためのデスクトップミュージックソフトのひとつ。ユーザーが、メロディーと歌詞を打ち込むことで歌声を合成するソフトで、クリエイターたちを中心に、幅広く利用されている。初音ミクは、その歌声の主をキャラクターとして可視化したもの。近未来的な歌声にマッチしたキュートな容姿に、アニメやキャラクターのファンからも注目を集め、彼女を使ってアニメを作りたいといったオファーもたくさん届いたという。

 そうした状況に、伊藤代表取締役は、一定のルールの下でならば、二次使用、三次使用は自由に行っていいという仕組みを作った。それが、世界を巻き込む“初音ミク現象”を加速させた。多くのクリエイターが初音ミクに曲を書き、その曲に合わせてミュージックビデオを作る人も現れた。できあがった動画共有サイトを通じて、日本に、世界に届けられた。

「日本語でしか歌えない『初音ミク』ですが、海外でも日本のカルチャーやサブカルチャーを好む層に支持された。現地に行って彼らと話してみると、本当に日本のことをよく知っています。初音ミクに関しても、アニメ作品のキャラクターと混同することもなくて、バーチャル・シンガーとして初音ミクを認識していて、支持してくれている」

 昨年はアメリカをはじめ、海外でも単独コンサートを敢行した。

「当社では、KARENTというレーベルを運営しており、初音ミククリエイターの音楽を世界中で広めるお手伝いをしています。またMIKUBOOK.COMという海外ファンのコミュニティサイト、FacebookやWeiboの公式コミュニティーも数十万人の会員がいます。アメリカで単独コンサートをしたことも手伝って世界中にファンベースが広がっていて、コンサートのオファーも、ヨーロッパ、アジア、南米、本当に世界中からいただいてます。今後は、日本のコンテンツを世界に紹介する手伝いができれば、と思っています。初音ミクがそのかけ橋になれたらいいですね」

 海外のウェブサイトが行った、ロンドン五輪のセレモニーに出演してほしいアーティストを挙げるアンケートでは、ナンバーワンにも輝いた。“初音ミク現象”はまだまだ大きくなりそうだ。

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伊藤博之(いとう ひろゆき)
1965年、北海道生まれ。北海道大学に職員として勤務したのち、1995年にクリプトン・フューチャー・メディア株式会社を設立。音に関わる事業を展開するなかで、2007年音声合成ソフト『初音ミク』を発売した。


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5000人を熱狂させた海外初コンサート MIKUNOPOLIS

 2011年7月2日に米ロサンゼルスで開催された、初音ミクの初めて海外公演『MIKUNOPOLIS in LOS ANGELES』。会場はLAでも屈指の規模のNOKIAシアターだったが、チケットは即日ソールドアウトとなり、追加席を急きょ発売した。ライブバンドをバックに、ステージを左右に動き回るミクに、約5000人の観客はノリノリ。11月にはシンガポールのアニメフェスでもライブコンサートを行った。