国会事故調聴取で菅氏が海水注入停止指示を否定

ニュースの焦点

ph_news0100.jpg

国会事故調で参考人として証言する菅直人前首相(Photo/AFLO)

 国会の東京電力福島原発事故調査委員会(国会事故調)は28日、菅直人前首相から参考人聴取を行った。会場となった東京・永田町の参議院議員会館講堂には、報道陣と一般傍聴合わせ約230人が詰めかけた。  菅氏が最も声を荒らげたのが、昨年3月12日に菅氏によって、第1原発1号機への海水注入停止指示があったかとの質問の時だった。「私の発言とは違う。そこだけははっきりとしてほしい」と、左手でこぶしを振りながら語気を強めて気色ばんだ。そして「淡水から海水に変えても再臨界が起きることはない。それは私もよくわかっていた」と述べた。  また、第1原発に「官邸の意向」として中止を伝えたのは、官邸に連絡役として常駐していた東電の武黒一郎フェローだったと説明し「原子力のプロ中のプロがなぜ注水を止めろと言ったのか、率直に言って理解できない」と批判した。  原発事故については「事故は国策として続けられた原発によって引き起こされた。最大の責任は国にある。発生時の責任者として事故を止められなかったことを改めておわび申し上げる」と謝罪。事故後、速やかに原子力緊急事態宣言を出せなかったことについて「特に支障はなかった」と強弁した。  事故発生翌日に枝野幸男官房長官の反対を振り切って第1原発の視察を強行したことについても「現場の責任者と話すことで状況が把握できると考えた。極めて大きなことであった」と意義を強調。米国からの技術支援の申し出を断ったことについては「大きな反省材料である」と述べた。  最後に「戦前の軍部に似た原子力ムラを解体することが改革の第一歩だ。事故を経験して最も安全なのは、原発に依存しないこと、脱原発の実現だと確信した」と強調した。  また菅氏の参考人聴取では、東電に「全面撤退」の方針があったかどうかが焦点となった。菅氏は「全面撤退と受け止めた」と繰り返した。  27日には事故当時の官房長官だった枝野氏からも参考人聴取を行った。枝野氏は放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の試算結果公表の遅れが「信頼を損なっている大きな原因になっている」と指摘。「多くの皆さんが避難を余儀なくされ、申し訳なく思う」と陳謝した。しかし住民への避難指示に関する政府側と専門家の協議内容など核心部分では「記憶にない」と発言したり、釈明が前面に出たりした。  一方、29日には福島市内で福島県の佐藤雄平知事が参考人として出席。佐藤知事は、政府から届いていたSPEEDIの情報を住民に周知せず破棄したことについて「情報共有に組織上の問題があった」と述べ、対応に不備があったことを認めた。