渋谷UPLINK亭で新しスタイルの落語を楽しむ

20120619c.jpg 東京・渋谷のUPLINKで15日、「桂春蝶の落語@渋谷UPLINK亭」が開催された。同落語会は、今年から活動の拠点を東京に移した上方落語の桂春蝶の高座を中心に、東京の落語家の小噺、さまざまなジャンルのアーティストのライブなど、落語をもっとカジュアルに体験してもらおうという試み。3回目となるこの日は、東京のゲスト落語家に林家たけ平、音楽ライブアーティストにtriola(トリオラ)を迎えて行われた。

 まず登場したのが、林家一門の中でもイケメン落語家として多くの女性ファンを持つ林家たけ平。東京スカイツリー周辺施設内の高座のある飲食店の話など、最新の話題で客を引き付け「味噌豆」へ。短い噺で、オチも読めてしまうのだが、テンポよく丁寧に演じていてとても楽しめた。続いて桂春蝶の「母恋くらげ」。同作は、柳家喬太郎の新作落語だが、喬太郎自身、3.11の震災以来封印していたこともあり、久しぶりに聞く。海の生物の動きも喬太郎よりお腹の肉が邪魔していない分シャープで、(喬太郎師匠すみません)初めて落語を聴く人には、新鮮だったのでは? 何度聞いても、このバカバカしさが落語だと思える同作をきっちり演じてくれ大感激。その後、席亭と春蝶のフリートークをはさみ、triolaのライブ。ヴァイオリンの波多野敦子とヴィオラの手島絵里子によるユニットの演奏は、とても心地よく癒系。春蝶の体験に基づく心理状態を即興で曲にして演奏するなど、クオリティーの高いパフォーマンスに会場から大きな拍手が起こった。仲入り後は、春蝶の2席目「一文笛」。まくらで言っていたように、笑いどころの少ない人情噺だ。ヘビーな展開に脱力系のオチ。オチから作った?と思われるような噺だが、上方落語っぽさ全開でかなり好き。こういうなかなか聞くことが出来ない噺を聞けるのはうれしい限り。喬太郎の新作をやり、上方の古典をきっちり見せてくれ、ライブも楽しく大満足。上方落語も江戸落語も、古典も新作も垣根を取っ払った春蝶落語。今後も楽しみな会であり、ここから発信されるパフォーマンスが、大きく広がっていくことを期待したい。