東電株主総会で猪瀬氏が「東電病院」糾弾
電力9社の株主総会が27日、各地で一斉に開かれた。
東京電力は都内で株主総会を開き、公的資金による資本注入に必要な定款変更など会社側提案を可決した。これにより政府が2分の1以上の議決権を握る実質国有化が正式に決まり、政府は7月25日に1兆円を資本注入する。勝俣恒久会長、西沢俊夫社長ら経営陣の多くは退任し、社外取締役が過半を占める新体制に移行。数年後の民間復帰を目指し、公的管理下で経営改革に取り組む。
総会では11人の取締役選任や委員会設置会社への移行など、東電側が提案した議案はいずれも可決。一方、筆頭株主の東京都が提案した「顧客サービスを第一の使命とする経営理念を掲げる」の定款変更は21%の賛成にとどまり、可決に必要な3分の2以上には達せず、別の株主が提案した脱原発関連の議案などとともに否決された。出席者は昨年の半分以下の4471人。所要時間5時間31分は、昨年(6時間9分)に次ぐ過去2番目の長さだった。
総会は、冒頭から勝俣恒久会長の議長解任動議が出るなど大荒れ。株主からは東電の姿勢を厳しく追及する意見が相次ぎ、株主の怒号が飛び交った。
重苦しい雰囲気に包まれた会場。拍手が起きたのは、筆頭株主である東京都の猪瀬直樹副知事が料金値上げ根拠の明確化を求め、マイクを握った瞬間だった。「りそな銀行や日本航空は経営再建中の支給をやめていた」。猪瀬氏は他社の例を引き合いに、東電が値上げ後の料金原価に今冬のボーナスを組み込んでいることを糾弾。東電が社員や、その家族しか診察しない東電病院(新宿区)の入院ベッド利用率が2割であることも明らかにし、売却を迫った。
東電側が、周囲に大病院が多いことを理由に都から一般病院への変更認可が認められないと説明すると、猪瀬氏は「挑戦的な言い方だ」と厳しい口調で切り返し、参加者らに都が提案した議案への賛同を求めるなどヒートアップした。
今回の大きな焦点となった東電の実質国有化。株主からは、「このままでは政府の操り人形となり、既存株主の権利はなくなってしまう」と危機感を強める声があがったが、勝俣氏は「今後国の責任について議論が行われていく」と述べるのが精いっぱいだった。
東電は総会後に開いた取締役会で、原子力損害賠償支援機構の前運営委員長で弁護士の下河辺和彦氏が会長に、広瀬直己常務が社長に就任する人事を決めた。