ニュースの焦点 臨時国会開幕も参院での野田首相の所信表明演説はなし
第181臨時国会が10月29日召集され、野田佳彦首相は衆院本会議で所信表明演説を行い「明日への責任を果たすために道半ばの仕事を投げ出すわけにはいかない」と政権維持への決意を表明した。「やみくもに政治空白をつくって政策に空白をもたらしてはいけない」とも述べ、年内の衆院解散を求める野党側を牽制した。野党側は先の通常国会で首相問責決議が可決された参院での演説の聴取を拒否した。演説が衆院だけとなったのは現行憲法下では初めて。
首相は演説で衆参両院の「一票の格差」是正のための選挙制度改革関連法案の今国会成立や特例公債法案の早期成立に向け、野党側に協力を呼びかけた。
外交・安全保障では沖縄県・尖閣諸島、島根県・竹島を念頭に「領土・領海を守るという国家として当然の責務を、国際法に従って不退転の決意で果たす」と強調。ただ、中国や韓国を名指しすることは控えた。
31日には野田首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が衆院本会議で始まった。ここで野田首相と自民党の安倍晋三総裁による直接対決が実現したが、首相は年内解散を求める安倍氏に言質を与えず“逃げ”の一手を決め込んだ。
安倍氏は「一度、解散を約束した政権はその存在自体が政治空白だということを肝に銘じていただきたい!」と年内解散を要求。首相を「権力にしがみつく惨めな姿」とこき下ろした。民主党議員のやじには「選挙が近くて議席が危ない恐怖は分かるが、静かに聞いてほしい」と挑発した。
しかし、首相は答弁で解散へのハードルを上げた。前原誠司国家戦略担当相が発した年内解散論について「政治家個人の感想」と一刀両断。安倍氏が早期解散に向け衆院の「一票の格差」是正の先行実施を求めても、与野党調整が最も困難な「議員定数削減」の重要性を強調。解散条件に経済対策も追加した。
平成25年度予算案には「政治のリーダーシップのもとで予算編成にあたりたい」と意欲を示した。その一方で、10月19日の自公両党党首との会談を引き合いに「『環境整備した上で判断したい』と(参院での首相)問責決議可決も念頭にギリギリの線で話した。含意をもう一度かみしめてほしい」と語った。
安倍氏らに続いて登壇した自民党の甘利明政調会長の、日教組出身議員を相次いで文部科学政務官に起用していることの指摘に対しては「医師が厚生行政に、弁護士が法務行政に関わるのと同様に、教師が教育行政に関わること自体、不都合はない」と答えた。安倍氏は代表質問後、記者団に「国政に責任を持っていることをもう一度自覚し、答えを持ってきてもらいたい!」と繰り返した。
一方、民主党内からの首相批判はこの日もやむことがなかった。衆院本会議に先立ち国会内で開かれた鹿野道彦前農林水産相率いるグループの会合で、鹿野氏は「離党者がまた出たのに政権には危機感が足りない」と公然と批判した。