ニュースの焦点 野田首相がとうとう「衆院解散」民主分裂に拍車
野田佳彦首相は14日、安倍晋三自民党総裁らとの党首討論で、来年1月召集の通常国会までに議員定数削減の確約をすれば、16日に衆院を解散する意向を表明。自民党はこれに協力する方針を決定。政府・民主三役会議は14日夜、衆院選日程を12月4日公示−16日投開票とすることを決めた。
党首討論で首相は特例公債法案の成立、最高裁が「違憲状態」としている「一票の格差」是正、定数削減への協力を要請。このうち与野党調整が難航している定数削減について「通常国会で必ずやると決断してもらえるなら16日に解散してもいい」と述べた。
今年8月8日、自民党の谷垣禎一総裁(当時)と公明党の山口那津男代表に「近いうち国民に信を問う」と約束して以来、首相は解散のタイミングをうかがってきた。野党からの「嘘つき」批判や田中慶秋前法相の辞任で内閣支持率が急落し、首相に迷いが生じたが、景気悪化への懸念が背中を押した。
安倍氏は14日、都内での講演で「この国難の政局、政治空白に終止符を打つことができた」と胸を張った。公明党の山口那津男代表も「歴史的な党首討論になった」と述べ、首相に対しても「約束を守るという信頼感は崩れなかった」と評価した。
解散先送り論が大勢だった民主党内は動揺が走った。低支持率の野田首相の下で衆院選に突っ込めば、政権転落はおろか大量落選の憂き目に遭うのは明らか。自らの生き残りをかけて「第三極」政党などへの移籍を探る離党ドミノが一気に加速しそうだ。
鳩山由紀夫元首相は14日夜、記者団に対し、首相を退陣に追い込みたいとの考えを示した。自身の離党の可能性に関しては「さまざまなことを考えている」としたうえで、民主党の中でやっていくことは厳しいのではないかとの質問には「おっしゃる通りだ」と答えた。
14日には閣僚経験もある小沢鋭仁元環境相が日本維新の会に合流するため離党することが発覚。大阪選出の中川治衆院議員も同夜、記者団に「次の選挙に民主党から出馬することはない」と明言した。
TPP反対派の山田正彦元農林水産相は「首相が交渉参加を表明したら、みんなで覚悟をもって次の行動に移る」と集団離党を示唆した。
動揺は中間派にも広がった。鹿野道彦副代表は「解散表明はあまりに唐突」と両院議員総会での首相の説明を要求した。民主党を離脱中の横路孝弘衆院議長までもが「年内解散なら違憲」とする文書を配るなど、党内は「首相批判」一色となった。
連立を組む国民新党幹事長の下地幹郎郵政民営化担当相は記者団に「首相が何を考えているか分からない。一人で突っ走っている」と痛烈に批判した。