行方不明の資産家男性ら遺体で発見 主犯格の男逮捕
スイス在住の日本人資産家夫婦が昨年12月から行方不明になっている事件で、埼玉県久喜市で男女の遺体が見つかり、警視庁捜査1課は29日、失踪した投資会社役員の霜見誠さん(51)と確認した。もう一体は妻の美重さん(48)とみられている。いずれも首に絞められた痕があり、捜査1課は殺人・死体遺棄事件と断定して築地署に捜査本部を設置。死体遺棄容疑で、職業不詳の桑原隆明容疑者(41)を潜伏先の沖縄・宮古島で逮捕した。30日には死体遺棄容疑で主犯格の食品会社役員、渡辺剛容疑者(43)を逮捕した。29日に潜伏先の沖縄・宮古島で洗剤を飲んで自殺を図ったが、容体が回復。病院搬送の際は「死なせてくれ。東京で人を殺してきた」と語り、調べには「夫妻の遺体を埋めたのは間違いない」と容疑を認めている。
霜見さんは失踪当日の昨年12月7日、同僚に「(渡辺容疑者が)良い顧客になるかもしれない」と話していたことが判明。霜見さん夫婦は渡辺容疑者から栃木・日光での嘘のパーティーに誘われた後に失踪しており、捜査本部は渡辺容疑者が架空の投資話も持ちかけて信用させたとみている。
霜見さんは失踪前日、スイスの口座から国内の預金口座に700万円を移し、500万円を下ろしていた。銀座のマンションから同額の現金が見つかり、捜査本部は渡辺容疑者が預金を奪おうと殺害を計画した可能性もあるとみている。
事件は、主犯格の渡辺剛容疑者の逮捕で、新たな局面を迎えた。
一見周到にみえる犯行だが、多くのほころびがある。殺害後に東京駅で霜見さんのクレジットカードを使い、新幹線の回数券約300万円分を購入しようとした際も、身分確認を求められて失敗に終わった。不審なマスク姿の男が防犯カメラにとらえられるミスも犯しており、夫婦が事件に巻き込まれたと、警視庁が判断する要因の一つとなった。
犯行動機も「謎」だ。霜見さんの資産が目的としても、手に入れた現金は、質屋で財布を換金した金額だけだったとみられ、捜査関係者は「少額を奪うために、これだけ手の込んだことをするだろうか」と首をかしげる。霜見さんと渡辺容疑者らの間の、投資をめぐるトラブルも「把握はしていない」(捜査幹部)という。