ニュースの焦点 規制委が評価報告書案了承「東通原発に活断層」認定
原子力規制委員会の専門家調査団は18日、東北電力東通原発(青森県)敷地内にある断層の一種「破砕帯」についての評価会合を開き、「13万〜12万年前以降に活動した耐震設計上考慮する活断層の可能性が高い」とする報告書案を大筋で了承した。調査団以外の専門家からも意見を聞き、最終的に報告書を規制委に提出するが、停止中の1号機の再稼働は当面困難な見通しとなった。
報告書案で敷地内の活断層が指摘された原発は、日本原子力発電敦賀原発(福井県)に続き2カ所目。活断層の可能性が高いとされる東通原発の破砕帯は、北側に隣接する建設中の東京電力の敷地にも延びており、影響は避けられない。
報告書案は、断層「F−3」について「断層面に石が取り込まれる横ずれ断層の一般的な特徴がある」と認定。その東側を走る「F−9」は「F−9を境に本来は山側より低くなる海側の地形が高まっており、断層活動で隆起したと考えられる」と結論付けた。1号機直下を走る「f−2」については、さらなる検討が必要とした。
東北電はこれまで地層の変形は地中の粘土が水を吸って膨む「膨潤(ぼうじゅん)」が原因で活断層ではないと主張。しかし報告書案では「膨潤の場合、岩盤が膨らむので、断層面に隙間は生じず、砂礫(されき)層を引きずり込むような構造にはならない」と東北電の主張を否定した。敷地内破砕帯の活動性は低く、規模が小さい「C級」と評価。ただ、耐震補強工事などが必要となることは必至で、運転停止は長期化が予想される。
評価会合には事業者の東北電力にも発言の機会は与えられたが、会合参加の打診があったのが3日前の金曜日(15日)ということもあり、発言に窮する場面が再三見られた。また先月末の日本原子力発電敦賀原発の評価会合では、原子力規制庁の審議官(当時)が事前に原電に報告書案を渡すという問題があったため、今回の報告書案は厳重に管理され、東北電に渡されたのは会合当日の朝だった。
もっとも調査団がまとめた報告書案が万全というわけでもない。産業技術総合研究所の粟田泰夫主任研究員は「見てきたことだけが書かれており、過去の膨大なデータや隣接する東京電力の敷地も含めて評価する必要がある」と自ら報告書案の欠点を指摘した。
座長役の島崎邦彦・規制委委員長代理も「(可能性が高いというだけで)活断層だと判断する根拠としては不十分というのはまさにその通り」と認めざるをえなかった。
一方、東北電側が「活断層ではない」ことを主張するための調査に終始していることも議論が停滞する一因ともなっている。活断層を否定する根拠とする「膨潤説」はもはや破綻しかかっているが、規制委に対して再度の調査を求める計画書を提出するなど調査は長期化する見通しだ。
報告書案では活断層は規模が小さい「C級」と判断されているため、耐震設計を改めれば早期の再稼働が望める。だが梅田健夫副社長は「ステップ・バイ・ステップで、まずは活断層ではないとする調査を進めたい」と譲らなかった。