南海トラフ巨大地震の被害想定 東日本大震災の10倍
東海沖から九州の太平洋側に延びる南海トラフ(浅い海溝)で起きるマグニチュード9.1の最大級の巨大地震について中央防災会議の作業部会は18日、経済被害は最悪で220兆3000億円に達するとの想定を公表した。国家予算の2倍を超える規模で、直接的な被害額は東日本大震災の10倍に及ぶ。強い揺れと津波で関東以西の40都府県が広範囲に被災し、国民生活や日本経済に深刻な打撃を与えるとして防災対策の抜本的な強化を求めた。
被害額はいずれも最悪のケースで、建物や資産など被災地の直接的な被害が169兆5000億円。製造業が集中する「太平洋ベルト地帯」が甚大な被害を受け、生産活動などが停止することによる全国の経済被害は1年間でGDP(国内総生産)の9.3%に当たる44兆7000億円。道路や鉄道の寸断に伴う被害は半年間で6兆1000億円と推計した。直接被害の最小ケースは81兆8000億円。
東海・東南海・南海地震が連動した場合の平成15年想定と比べ、被害額は2.7倍に膨らんだ。ただ、建物の耐震化などの対策を実行すれば、直接的な被害は半減できるとした。都府県別の直接被害は愛知が最悪の30兆7000億円。次いで大阪24兆円、静岡19兆9000億円、三重16兆9000億円で愛媛、高知を含む計6府県が10兆円を超えた。関東は神奈川7000億円、東京、千葉が各6000億円。
東海道・山陽新幹線や東名高速が不通になり、中部、関西空港が閉鎖されるなど交通機能は広域で停止。物流寸断や生産減少が長期化すれば、日本経済の国際競争力低下や国の財政悪化が懸念されるとした。
被災地では東海地方を中心に3000万人以上が断水の影響を受け、2700万軒が停電するなどライフラインに大きな被害が出る。避難者は950万人に達し物資不足も深刻化。原子力発電所の事故の有無は別途検討すべきだとして評価しなかった。