規制委が原発新基準案了承 適合の候補は少数
原子力規制委員会は10日、7月に施行される原発の新規制基準の条文案を了承した。地震や津波の影響を抑える防潮堤や免震重要棟を申請と同時に義務づけるが、中央制御室の代替施設を備えた「特定安全施設」(仮称)など大規模な設備については、5年間の猶予を与えることが柱。11日から30日間、意見公募(パブリックコメント)を実施し、修正を検討した上で正式に決定する。
規制委が了承した新規制基準の条文案は原発再稼働の判断に不可欠な安全性をはかるモノサシとなる。ただ現状でこれをクリアできる早期再稼働の有力候補として名前が挙がるのは四国電力伊方原発(愛媛県)など少数の原発にすぎない。本格的な再稼働には時間が必要で、当面は不安定な電力需給が続くことになりそうだ。
新基準に照らすと、再稼働の条件を満たす可能性があるのは、敷地が高いため津波の危険性が低く、敷地内に活断層も見つかっていないような原発だ。伊方原発以外では、九州電力川内原発(鹿児島県)が想定される。
しかし、多くの原発は、地震・津波対策の防潮堤や免震重要棟の設置などが必要で、審査に入るまで時間がかかる。
7月時点で規制委が審査に入れるのは3原発ほどで、電力会社側は「どのくらいの早さで審査に対応できるかわからない」(大手)と困惑を隠せない。
また、規制委はこの日、新基準とは別に、原発の運転を「原則40年」とする廃炉ルールも了承。1回に限り最長20年間の延長を認めるが、その際に設備の劣化状況を調べる「特別点検」を義務化する。
大量の放射性物質が放出される事故を、原発1基につき100万年に1回以下に抑える安全目標も正式決定した。