前田敦子が明かす「中田監督は愛されキャラ!」
『リング』シリーズなどで世界中を戦慄させてきた中田秀夫監督と、昨年AKB
48を卒業し、女優として新たな一歩を踏み出した前田敦子が初タッグの舞台裏を語る!
ホラーの名手・中田監督は○○キャラだった!? 前田敦子の証言
前田敦子(以下:前)「お名前は存じ上げていましたけどお会いしたことがなかったので、最初は監督のことをすごく怖い人なのかと思っていましたが…真逆でした(笑)。仕事に関してはもちろん本当に真面目なんですけど、人柄は真逆でしたね。スタッフさんと話しているのを見ていて、監督は愛されキャラなんだと分かりました(笑)」
中田秀夫(以下:中)「僕は助監督のころからそうなんです(笑)。助監督のときってまだ仕事もろくにできなかったりするでしょ。だからバカをやってみんなの潤滑油になっていて、このポジションはおいしいぞと思い、いまだにそのままなんです(笑)」
前「私はそんな監督を見守らせて頂いていました(笑)」
中「僕もこの作品で会うまでは“国民的アイドル・前田敦子”しか知らなかったから、今回は“素顔のあっちゃん”も見せることができたらいいな、と思っていて。もちろん、AKB48で約7年もの間、頑張ってきた前田敦子の存在感も出るだろうけど、人知れず隠している不安や寂しさなんかをこの明日香という役にぶつけてもらいたいと思ったんです。前田さん自身、ついこの間まで10代の少女だったわけで、少女から女性へと成長する時期の繊細さを、明日香の心のもろさや壊れやすさに重ねてもらえればいいな、と」
前「そういえば撮影中、10代の恋愛モノを撮りたいってずっとおっしゃっていましたよね。僕は17歳の女の子の気持ちが分かるんだ、って」
中「本当に分かるんです。ときどき、興奮すると手の動きが女子っぽくなると言われたこともあるし(笑)。胸がキューンとなるやつがいいなあ…。なんでそんなに笑うの(笑)」
中田監督が語る“ホラーヒロイン”前田敦子の魅力とカンの良さ
中「明日香は“ある存在”にとらわれていく役なので、しだいにメイクも青白くなっていくんですけど、そうなればなるほど前田さんが美しくなっていく。そもそも僕はホラーのヒロインはすべからく美しくなければならない、と思うんです」
前「そうだったんですね(笑)。私はもう、監督から明確な指示をもらい、それをもとにわりと自由に演じさせて頂いたという感じなので」
中「その場面によって恐怖の表現の度合いを指示するわけだけど、前田さんはそこのカンがすごくいい。確かに貞子のような恐怖の存在は怖くなければならないんだけど、見る人がヒロインに共感して怖がってもらうことのほうが、ずっと重要なんですね。だからそこはいつもすごく注意して撮るんですけど、本当に微妙なさじ加減だし、物語の進行通りに撮影できるわけではないし、難しかったと思います」
前「監督が“今は恐怖レベル2だよ”という言い方をしてくださったので演じやすかったです。そう言われればなんとなくは理解できるので(笑)」
中「だんだん“2.75だよ”とかなっていたけどね(笑)。それと前田さんは集中力もすごい。今回、僕の映画の中では珍しいくらいテイク数が少なかった」
前「確かに私、短期集中型なほうだと思います(笑)。その瞬間に時間を忘れるくらい集中するタイプですね。だから逆に、現場を出てからもお芝居を引きずるということも無くて」
中「短期といっても、持続力もあると思うよ。僕は本番を何度も撮るほうなんだけど、回を重ねたほうが良い演技が撮れるってわけでもなくて、結局1回目を使うことになったりするんだけど。でも今回は、5回やったら5回目を使うことがけっこう多かった。これも僕の作品では珍しい(笑)。前田さんが集中力を持続させることができたからだと思う。すごい暑い日の撮影とかもあったのにね。砂場で撮影したとき、あれ大丈夫だった? 40度くらいあったよね」
前「私、暑いのは平気なんですよ。逆に寒かったら大変でした(笑)。それにミノル役の田中奏生君が、すごくプロ意識高くて“全然大丈夫!”って。私も刺激を受けて、頑張ろうって思いました(笑)。奏生君は最初、すごく人見知りだったんですよ。私は小さい子がすごく好きなので絶対仲良くなろうと思って積極的に話しかけていたら、最終的に、彼の中の“好きな人ランキング年上部門”で1位になりました(笑)」
怪奇現象があっても大丈夫!?
意外と楽しいホラー映画の撮影現場
前「私、ホラー映画だから撮影現場も怖いものだと思っていたんです。でも監督が意外と笑いが絶えないんだよ、とおっしゃってくれて、その時点で肩の力が抜けたんですよね。よかった、怖い思いしなくていいんだ!って(笑)」
中「全部がそうとは言わないけど、ホラー映画の現場って笑いがあるんですよ。例えば『リング』のときも、貞子がテレビから出てくる、と台本に書いてあるのを読むと、ほとんどの人が笑うんですよ。それはそれで、だったらいかに怖くしてやろうかって燃えるんだけど。実際、笑いと恐怖は紙一重だったりするんです」
前「貞子がテレビから出てくるシーンをどうやって撮ったとか、監督やスタッフさんから当時の話を聞くことができたのもすごく面白かったです。あと、撮影前に“あたりまえ体操”とかもやりましたよね! 撮影現場に朝、最初にあの曲が流れだして、みんなで体操して(笑)」
中「毎日はやらなかったけどね。すごく怖いシーンを撮る前にやったらお芝居の邪魔になるから監督としてそれはさすがにまずいので(笑)」
前「今日は怖いシーンとか家族団らんのシーンとか、わりと分かれていたから、監督がそれに合わせてやってくれていたんですよね(笑)。演技では難しいところがたくさんありましたけど、基本的にはすごく楽しい現場でした。今回ちょっと不思議なことがあったけど、監督が全然動じてなかったので、私も平気でしたし」
中「ああ、除霊シーンで音声が撮れていなかった事件ね。詳しくは言えないんだけど…録音や撮影の人に聞くと、いわくある場所で音や画像が撮れなくなるとか逆に変なものが撮れたとか、けっこうあるって聞くよ。『リング2』のときも、知らない男の声が入ってて、霊だろうってことになったけど」
前「今回は無いんですよね? 何か映っているとか、聞こえるとか…」
中「今のところ見つかってないな。今回使った撮影所は“出る”って言われてはいるんだけど。まあ、僕も大学は理系だし、僕の中の大槻教授が簡単には信じさせてくれないんだけどね(笑)。それに何か映っていてもデジタル時代だからどうせ仕込みだと思われちゃうし」
前「何か映ってないかなあ。探しましょうよ!」
中「今から何か仕込んでおこうか」
前「そういうのはダメです(笑)!」
“なんだかちょっと怖い話が楽しくなってきました”と前田敦子。“次回はあっちゃん主演で爽やかな青春恋愛映画が撮りたいな”と中田監督。お互いに良い刺激と影響を受けたようだ。
(本紙・秋吉布由子)
『クロユリ団地』
1998年に“貞子”ブームを生み出した映画『リング』を発表して以来、日本のみならず世界中を恐怖に陥れた恐怖映画の巨匠・中田秀夫監督が、女優として新たなスタートを踏み出した前田敦子を主演に迎え、再び世界を震撼させる。共演に『相棒』シリーズに出演の実力派俳優・成宮寛貴。
いわくつきの団地に引っ越してきた主人公・明日香が巻き込まれる、恐るべき体験に隠された真実とは。孤独が呼び寄せる恐怖の存在とは…?
監督:中田秀夫 出演:前田敦子他/1時間46分/松竹配給/5月18日より新宿ピカデリー他にて公開 http://kuroyuri-danchi.jp/http://kuroyuri-danchi.jp/