豪雨で鉄橋が崩落 2年経っても復旧のメドすら立たず
自由民主党の青年局が昨年2月11日より行っている東日本大震災の被災地訪問事業「TEAM−11」。6月11日に行われた第14回では福島県大沼郡金山町・南会津郡只見町に足を運んだ。
この地域は東日本大震災ではなく、平成23年7月に起こった新潟・福島豪雨の被災地。当時の豪雨でJR只見線の会津川口駅から只見駅の間で鉄橋が崩落し、現在まだ復旧のメドは立っていない。
2年も経っているのになぜ!? という疑問も持ち上がるところだが、なかなか難しい問題があるという。
本来、JR東日本には迅速な復旧に務めてほしいところなのだが、同社は単独で復旧費用を負担するのは困難との見方を強めているのだ。同社は5月末には復旧について費用は約85億円、工期は4年以上という試算結果を発表した。単独での復旧は難しいというのは、只見線が災害前から赤字路線であるということが大きいようだ。
となると関係する自治体が復旧費用を負担することにならざるをえない。しかしこのあたりの自治体に潤沢な資金があるわけでもない。「では国が補助すべきではないのか」という声もあがりそうなのだが、JR東日本は黒字企業のため、国は現行制度では補助金を投入できないのだ。
そんななか「とにかく現状を知ってもらいたい」という地元の思いが青年局に届き、今回の視察に至った。
青年局の面々は当日、新幹線で郡山入り。そして金山町と只見町の被害現地調査へ。只見線会津川口駅から只見駅に至る未復旧区間の鉄橋の崩落現場やダムの視察を行った。
その後、只見川流域住民との意見交換会が持たれる。
意見交換会には地元の自治体の首長らが参加。そして多くの住民が耳を傾けた。
冒頭、小泉氏が「只見に参りましたが、ただ見に来たわけではありません。みなさんの声を聞きにきました。私たちは今日は聞き役ですから、みなさんの率直な声を聞かせていただければと思います」と挨拶した。
出席者からはさまざまな意見や要望が出された。
「列車のあることの安心感。バスが通ればいいということではないということを分かってほしい」「自然志向の人々が風評被害でまだ危ないと勘違いしている人がいる」「再建に前向きに取り組んでいる人たちになんらかの助成、支援をしてほしい」「このへんの主な産業はやはり農業。TPPはどう影響するのか? 分かりやすく教えてほしい」「只見線がないと老齢者は病院にも通えない」などなど。
そして住民からは「将来原発はどうするのか!? 青年局の若い人たちの意見が聞きたい」という質問が投げかけられた。
これらの意見を受け青年局の熊谷大参議院議員は島根県の隠岐にある島前高校や同じく被災地である北海道の奥尻のワインの話を例に出し「JRが“復旧させてください”と言ってくるような環境にするにはどうしたらいいかみなさんで考えませんか!!」と提案する。また野中厚衆議院議員は西武HDとサーベラスの話を引き合いに、埼玉県での関連の首長から県会議員、国会議員までが超党派で意見を発信し、秩父線という生活路線を守った経緯を語った。
そして最後に小泉氏が「只見の問題は線路を復活させるかどうかというだけの話ではない。地域のまちづくり、公共事業、地場産業をどうするかといったすべてのことを内包している。只見線のことを考えることはこれからの地域のあり方、これからみんなで地域のことを考えるいいチャンスが来たんだと思います」と語った。
原発については「まず我々がみなさんに言わなければいけないのは心からのお詫びです。私の解釈では、“今すぐにはすべての原発をなくすのは無理だろう。どうやったらどこまで減らせるのかをチャレンジしてみよう”というのが、今の自民党のスタンスだと思っています」と真摯に答えた。
そして最後に金山の炭酸水を使った「復興ハイボール」を使ったらどうだろうかと、若い世代ならではの提案を投げかけ、意見交換会は終了した。
政治家のもとには全国から毎日多くの要望が寄せられる。メディアが取り上げるような案件はその一部だ。今回の只見のように、全国区のメディアが取り上げる機会が少ない問題は埋もれがちになってしまう。TEAM−11の活動はそんな問題にも目を向けさせている。
TEAM−11とは!?
自由民主党の青年局が昨年2月11日より行っている東日本大震災の被災地訪問事業。これは小泉進次郎青年局長、青年局国会議員、全国11ブロックの青年部・青年局代表が仮設住宅に住んでいる被災者との対話集会や復興現場の視察などを通じて、被災地の困難に向き合い、課題の解決に向けて取り組んでいこうというもの。これまでも第1回の福島県を皮切りに宮城県、岩手県といった被災地に出向き、被災者と活発な対話を行っている。
福島県の会津若松から新潟県へ山あいを縫って進む列車、それが只見線。自然にあふれる奥会津の観光には欠かせない路線だった。春には新緑、秋には紅葉。その冬景色は、かつて日経新聞の“何でもランキング”「冬景色のきれいなローカル線」で第3位に選ばれたほど。
国土庁(現在の国土交通省)が1996年に制定した『水の郷百選(みずのさとひゃくせん)』にも選ばれている只見町を流れる只見川の水の美しさは多くの観光客に愛されている。「緑と水と心のふるさと只見」のキャッチフレーズも納得だ。