サイレントコメディーのが〜まるちょばが新たな挑戦! 東京をJACKする!

SPECIAL INTERVIEW

徹底して創り込んだストーリー性のある舞台作品と、ライブ感爆発のショーで笑わせる、サイレントコメディーデュオのが〜まるちょば。赤と黄色モヒカンの2人が磨き上げたパフォーマンスのおもしろさは、国境も言葉も文化も宗教も超えて、世界中を笑わせている。ハリウッドへの進出もリアルになってきた彼らの新たな企みとは?

「飛んだ瞬間を押さえてね、じゃあ行きますよっ! はいっ!」。太陽がさんさんと照りつけるストリートに、黄色いモヒカンのHIRO-PONの大きな声が響く。それに合わせるように赤いモヒカンのケッチ!はにっこりと笑顔を見せる。

「2人の勢いを撮りましょう」。写真は、そんな曖昧なオーダーに、が〜まるちょばの2人が全力で応えてくれたくれたものだ。自らアイデアを出しながら、通りを駆け抜け、位置を調整しながら何度もジャンプ。写真を見ると、トレードマークのジュラルミンケースのエッジに沿うようにと、ジャンプも体も見事にコントロールしている。脱帽だ。

 が〜まるちょばは、言葉を使わず、磨き上げられた体と技、演出、そしてユーモアなどなど、あらゆる要素をつぎ込んだパフォーマンスで、笑わせ、魅せ、感動させる。今年もすでに、さまざまな場所で笑顔を作り出してきた。単独公演、若手アーティストたちとタッグを組んだ2種の日本での公演があり、吉本新喜劇にも出演。さらには、グルジア、コンフェデ杯とデモで加熱するブラジルでもパフォーマンスした。今月末にはイギリスに行く。まさに、飛び回っているという表現そのものだ。

「グルジアはすごかったですよ!」と、ケッチ!。4月に初めて訪れたグルジアでは大歓迎を受けた。グループ名のが〜まるちょばとはグルジア語で「こんにちは」を指す言葉。ある意味で、彼らのルーツでもある。「滞在中、多少テレビ番組に出演したりもしたんですけど、公演当日は会場に入りきれないほどの人が来てくれました。客席はもちろん、階段も人でぎゅうぎゅう。あまりにも来ちゃったものだから、開演時間の8時には入り口を施錠しちゃってガードマンが立ってたぐらいです(笑)。本当にすごかったなあ」

「お客さんと一緒に作っていきたい」

 そんな彼らの最新の企てが、9月にスタートする『東京JACK』。東京都62市区町村のすべてで彼らの公演を行うというプロジェクトだ。「気づいちゃったんですよね、こういう公演の仕方ってやったことないなって。単なる思い付きで、熱い想いとかそういうのは全然ないんですけどね」と、HIRO-PONはさらりと言ってのける。

 当然のことながら、会場はすべて都内。とても身近に感じられる一方で、東西南北の市区町村、島しょ部もあわせると、その規模は壮大だ。「発表しているスケジュールではまだ全部行けてないんですけど、それでもこんなにあるんだって感じています。地図を見ると、三鷹、武蔵野、小金井あたりとか市がぐっと集まってるし、日程もほぼ毎日のところもある。でも、いろんなところに行けるのは楽しみですよ、近いけど(笑)。あ、ただ、小笠原には行きたいなあ」と、苦笑いを交えながらも、ケッチ!は前向きだ。

『東京JACK』で行うのは、テレビなどでもおなじみのライブ感にあふれた笑い満載のショー。ダイナミックな体技、ちょっとしたイタズラ、にやにやしちゃう大人向きのネタを圧倒的なスピードで積み重ね、笑いながら突っ走る90分だ。

 ケッチ!によれば、「この夏イギリスでやるのがこのタイプのショーで1時間程度の長さ。それにプラスアルファした内容」だという。が〜まるちょばの醍醐味を感じられる単独公演は、こうしたショーと、短編、1時間弱の長編ストーリーで構成し、観客をぐいぐいと彼らの世界に没入させていくのが基本スタイルだが、今回は、観客を彼らの世界にぐっと引き込む冒頭部分で突っ走る内容だ。

 HIRO-PONは、「短編やストーリー(長編)は、僕らの作った作品や世界をお客さんが見て感じてもらう部分で、ショーはお客さんにも参加してもらって一緒に作っていく出し物」だという。ショー部分では毎回、きちっと座って2人のパフォーマンスを待っている観客に対して、独自のメソッドで、が〜まるちょばの楽しみ方をじわじわと伝播させていく。「一緒に作っていくショーですから、みなさんに楽しんでもらいたいと思うんです。楽しみ方にしても人それぞれなので決まったものはないんですけど、お客さんが僕らを見て感じたままに感情を表現していいんだよ、声を出していいんだよ、そんな空気をみんなで作っていきたいと思って。いろいろ考えてたどり着いたかたちです」

 そんな思いで展開するショー。シャイなように見えた観客は進んでステージに上がり、パフォーマンスをしたり、ゲームを楽しむ。それを見て、「あれはスタッフでしょ? 仕込みでしょ?」と確認してくる人も少なくないそうだ。「でも全然そういうのじゃないんですよね。僕らのファンで何度も来てくれている人っていうわけでもないし。実際、うまくいかないときもありますから。結局、僕らがお客さんとの距離をどれだけ詰められるか、なんですよ」と、ケッチ!。

 大人も子供も、学生もサラリーマンもフリーランスも、手を叩いて大笑いし、ノリノリ。そんななかで、「意地でも笑うもんかって腕組みして見ている方もいます」と、ケッチ!は笑う。「でも、それはそれでいいかなって。楽しみ方は人それぞれ違いますしね。ただ、その人が最後にはちょっと椅子に浅く腰かけてステージを見ている、そんなふうになるようなものをお見せできたらいいなと思ってやっています」。HIRO−PONも「その人なりの100パーセントになればいい、そういう気持ちですよね。いろんな人がいるなかでそれぞれの100パーセント、その近くに持っていけるようにするっていうのが、僕らの仕事だしね」と、大きくうなずく。

「何が来ても大丈夫」という自信

 その気持ちのまんまで、東京津々浦々に出向いていく。東京の広さもあるが、会場も大小あれど、動員数は膨大になる。さまざまな経験をしてきた2人にとっても未体験ゾーンだ。

「何が来ても大丈夫、今、そんな気持ちなんですよね」と、ケッチ!の言葉は力強い。「始まる前からこんなことをいうのもなんなんですけど、これだけ日程があって、いろんなところだと、(お客さんが)入らないところもあると思うんです。だけども、僕らは入らなかったら入らないなりの楽しみ方ができると思うんです。技は磨いてきたし、それは観客が何人であれ、そのノリがどうであれ、出せると思うんです。切れば切るほど切れるようになる刀みたいにね」

 HIRO-PONは「小さな子供から年配の方までいろんな人たちが同じところに集まって、一緒にショーを作り上げていく、そんなことができるエンターテインメントって僕たちの舞台ぐらいだと思う」、と断言する。「だからこそ、できるだけ、たくさんの方に来ていただいて一緒に空気を作っていく体験をして、それを持って帰っていただけたらうれしいし、お客さんと出会って化学反応が起きるのが楽しいんですよね」

 さらにHIRO-PONは続ける。「同じことをやって、もう14年。いろんな技も磨いて、育ってもきましたけど、今も僕らは毎回何が起きるのか分からない状況ですから。今回もいろんな化学反応が起きると思います。こなすという考えでは明日は終わってしまう。毎日新しいものを見たいなって思えば、それが見えてくるんじゃないかなって思うんです」

目標はハリウッド!準備は「ぼちぼち」

 その一方で、昨年から進行中のプロジェクトもじわじわと進んでいる。世界を笑わせ、世界で受賞し、英国BBCで番組も作った彼らの視線の先にあるのは、ハリウッド進出。それを目指してパイロット版映画の制作もする。そのため、クラウドファウンディングで814万3000円を集めた。

 進行具合について尋ねると、今までの調子から一転、「それはぼちぼち…賛同して投資してくれた方に少しずつリターンは始めているんですけど」と、小声に。

「アイデアを絞って、まずは原石を作る作業に着手しないといけないというところで、いつ完成するとか、撮影に着手できるとか、今はまだ、お知らせできないんです。ただ、はっきり言えるのは、この『東京JACK』が終わらないかぎり、プロジェクトが思いっきり進むってことはないってことです」と、HIRO-PONは苦笑い。「でも、必ず作ります。安心して、待っていてください」と、2人は約束してくれた。

 が〜まるちょばの明日はまだまだ終わらない。
(本紙・酒井紫野)

62市区町村のうち、まずは49をジャック! あなたの街にが〜まるちょばが!

『東京JACK』では、9〜11月の3カ月間で、62ある東京都の市区町村の49に、が〜まるちょばが出向き、観客を巻き込んでの、抱腹絶倒のショーを展開する。スタートは9月4日の港区・ヤクルトホール。その後、練馬区、江東区、三鷹市、国立市と、一つひとつの区をジャックし、11月30日の渋谷区・渋谷公会堂に至るまでに東京をが〜まるちょばの笑いでいっぱいにしてしまう。

 現状、13の市区町村と島しょ部がカバーできていないが、時期をずらして、最終的には『東京JACK』を完全に遂げる予定だ。

 チケットは各会場とも、全席指定で4500円(税込)。4歳未満入場不可。公演およびチケットに関する問い合わせは、サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜19:00)。公演の詳細については、『東京JACK』公式ホームページ(http://www.gamar-jack.com/)で。