「いつも流れていたのはチェット・ベイカーだった」 マット・ダスク
2007年のアルバム『バック・イン・タウン』で注目を集めた、マット・ダスク。21世紀のシナトラとも呼ばれる彼の最新作は『マイ・ファニー・バレンタイン チェット・ベイカー・ソング・ブック』。没後25周年を迎えた伝説的なジャズマン、チェット・ベイカーに捧げる作品だ。
「チェット・ベイカーは、セックス、ドラッグ、ロックンロールみたいなバッドボーイイメージで語られがちではあるけれど、彼のパフォーマンスは最高そのもの。もともと僕は、フランク・シナトラやナット・キングコールを聞いていたけれど、彼と出会ってからは、宿題をやるときも、ガールフレンドを部屋に招いた時でも、流れていたのはいつもチェットだった」
制作にあたって、最も苦労したのは「(チェット・ベイカーの)情熱をつかんで表現すること」だったという。
「彼のパフォーマンスっていつもハイに聞こえる。なんていうのかな、歌うということをシンプルに追求しているようにも思えるんです。シンガーとしての僕は、フレーズはどうしたらいいのかとかいろいろ考えがちだから歌う以外のことができないような状況を作ってみたりしました。レコーディングを夜中や朝早くにするとか、スコッチをなめてから歌ってみたり(笑)。その方法でいいレコードができたから、次は、ワインを引っかけてからレコーディングしようかな(笑)」
これまでの作品のなかでも特別なものになったという。マットは「聞いてくれた人が、(チェットの活躍した)当時に戻って、彼の音楽の魅力に再び触れてくれたらうれしいですね」と話す。
9月開催の東京JAZZ で再来日も決定。ステージでは八代亜紀とのデュエットも披露する。「みんなに喜んでもらえるステージにしたいと思っています」。