「人間、ヘマしてなんぼです(笑)」—-イッセー尾形
「自分の役どころに、というより脚本そのものにひかれたんですよ」。俳優・イッセー尾形がそう語るのは、同名のベストセラー小説の映画化作品『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』。嘘をつくことで周囲に溶け込もうとする少年・和也が、自分の嘘がもとで一人旅をすることになり、さまざまな人との出会い、成長していく物語。「高校生だけじゃない、現代人の誰もが、プログラムされた人生を正確に生きなきゃいけないというプレッシャーを感じていると思うんですよ。和也も、和也が旅先で出会う大人たちもプログラムをヘマしちゃった人ばかり(笑)。実は今“ヘマ”というのが近年の僕自身のテーマでもあるんです(笑)。還暦を迎えてね、ヘマして人間なんぼだ、と思うようになったんですよ。だから登場人物たちのヘマっぷりにひかれたのかも(笑)」。彼が本作で演じた柳下も“ヘマした大人”の1人。趣味でデコトラ旅を続けているという風変わりな男だが、和也に大きな影響を与えるキーマン。和也役の若手俳優・佐野岳は劇中同様、イッセーから大きな影響を受けたと語っている。「岳くんは本当に素直な子で(笑)。実は今回、僕はほとんどアドリブでやらせてもらっていたので、僕とのシーンは彼もけっこう大変だったと思うんですよ。芝居相手の変なオヤジが毎回言うセリフが違うんだから(笑)。それを、場面の趣旨を確かめ合いながら2人で作り上げていった感じです。岳君はそんな僕を受け入れてくれて“ここはどうしたらいいでしょうね”っていろいろ聞いてきて。考えてみれば芝居相手にアドバイスしたのなんて彼が初めてじゃないかな。自然と教えてあげたくなるんだよね。オヤジ殺しだね(笑)」。それも“また会おう”と言いたくなる出会いだったに違いない。