江戸瓦版的落語案内 ネタあらすじ編
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
六尺棒(ろくしゃくぼう)
ある日、道楽息子の孝太郎がいい気分で、吉原からご帰還。戸が閉まっていたので、番頭さんにこっそり開けてもらおうと扉をたたくと、中から聞こえてきたのは口うるさい父親の声。「こんな時間にどなたですか? お買い物でしたら、明日の朝出直してきてください」とつれない返事。孝太郎これに「買い物客ではなく、息子の幸太郎です」と答えると、またしても「孝太郎のお友達ですか。手前どもにも孝太郎という一人息子がおりますが、とんだ道楽もので、夜遊び三昧。あんなものをこれ以上家に置いておいたら、身上がどうなるかわからない。従って、親戚縁者と協議をして、勘当することにしましたので、孝太郎に会ったら、どうぞお伝え下さい」とピシャリ。何を言っても聞く耳をもたない父親に孝太郎、ついに開き直り「そもそも出来が悪いのは製造元のせいで、その製造元が作ったものが悪ければ捨てるというのは身勝手じゃないですか」と逆ギレ。これを聞いた父親は、さすがに堪忍袋の緒が切れ、「やかましい! 世間では、親孝行なせがれが、“肩をたたきましょう”“腰をさすりましょう”風邪をひけば“お薬を買ってまいりましょう”と尽くしてくれる。少しは見習ったらどうだ」と言い返す。すると孝太郎も負けじと、今度は家に火をつけるとマッチをすった。戸の隙間から様子を伺っていた父親は慌てて、六尺棒を持って表へ飛び出す。追いかけられた孝太郎、家の周りを一周すると、父親が開けた戸に飛び込んで、錠をかけてしまった。腰をさすりながら、よろよろと戻ってきた父親、戸を叩きながら「おい、開けろ!」すると孝太郎「どなたですか?」。「お前のおやじの孝右衛門だ」。「手前どもにも孝右衛門という一人のおやじがおりますが、朝から晩まで働いて、終いには金を残しかねません。親類で協議して勘当しました」と、完全に立場が逆転。「やかましい! だいたい、世間の親父はせがれさんが風邪をひいたら“一杯飲んだらどうだ”“小遣いをやるから女のところにでも遊びに行け”ってもんだ。少しは世間の親父を見習いやがれ」。これを聞いた父親「何を言ってやがんだ。そんなに俺の真似をしたければ、六尺棒を持って追いかけて来い!」