「高畑勲監督の大ファンなんです」『しわ』監督 イグナシオ・フェレーラス

 スペイン期待の映像作家、イグナシオ・フェレーラス監督の長編初監督作『しわ』は、老人ホームにやってきた元銀行員の主人公が老いや認知症の問題に直面する姿を手描きアニメーションの手法で温かく静かなまなざしで描いたアニメーション。スペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞で最優秀アニメーション賞、最優秀脚本賞を受賞した。「このシリアスなテーマをどう見せるか、演出と編集に一番力を注ぎました。アニメではありますけど、観客にドキュメンタリー映画を見ているような感覚を持たせようと、緊迫するシーンなどで、ハンディーカムで撮ったような“手ブレ”感を出すなどカメラワークにもこだわりました」。実は日本のアニメがきっかけでこの道に進んだという監督。大ファンだった高畑勲監督に日本語字幕版を送ったことがきっかけで『ジブリ美術館ライブラリー提供作品』として日本での劇場公開が実現。「高畑監督にお会いしたとき、古い日本家屋に連れて行ってもらったんです。現代の建築に比べれば不便なこともあるんでしょうけど、その家には不思議な温かみがあって心地良かった」。現代社会が失ったものも多い、と監督。「特に先進国が直面している問題として、家族がバラバラになりがちな社会構造になっていると思います。人間は社会的な生き物だから、他の人との良い関係があれば上手に老いていくこともできると思うんです。僕は今41歳で、老いを知る最初の地点にいます。5年前に駆けあがっていた坂がきつくなったりね(笑)。でもそれもまた、人生のプロセスの一部で、少しずつそういった症状が出てきて、老いに対して慣れさせてくれるんだ、ととらえています。実際に老いたときどう思うかは、そのときにならないと分かりませんけどね(笑)」。日本の“今日の老人”と“明日の老人”は本作を見て何を思うだろうか。

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『しわ』11月6日(水)ブルーレイ・DVD発売 発売元:ウォルト・ディズ ニー・スタジオ・ジャパン
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