楽天・田中の今オフメジャー挑戦が大きく前進
日本野球機構(NPB)と米大リーグ機構(MLB)側で協議が難航していた新しいポスティングシステム(入札制度)が5日、ほぼ基本同意に達した。NPBが4日午前、MLB側と1時間半ほど電話で協議し、入札額の上限を2000万ドル(約20億円)に抑える案で交渉が進展した。
これで楽天の田中将大投手の今オフのメジャー挑戦が大きく前進する。
ここに至るまでは険しい道のりだった。
NPBは11月中の合意を目指し、11月26日に伊藤修久法規部長らが入札制度を含む新しい日米選手協定の締結に向けた、MLBとの直接交渉のため渡米した。しかし27日までの交渉は不調に終わる。28日から12月1日までは米国の感謝祭があるため交渉は一時中断を余儀なくされた。
伊藤法規部長から報告を受けた井原敦事務局長は28日には、「米30球団をどのように納得させるかの話し合いを継続している状況。(成立の見通しは)中間くらい」と説明した。
この状況を受け、3日、NPBは臨時の12球団代表者会議を開催した。ここでは入札制度の存続を改めて確認。そしてMLB側が求める入札額の上限を約20億円とする案について話し合いがもたれた。
渦中にある楽天は井上智治オーナー代行、米田純取締役連盟担当に加え、立花陽三球団社長が出席した。この代表者会議に球団社長が出席するのは極めて異例なことで、ことの重大さがうかがえる。
過去の落札額は推定で松坂が60億円、ダルビッシュで40億円といわれている。それに比べると20億円というのは楽天としてはおいそれと飲める額ではないのだが、他の11球団に押し切られる形で最終的に受け入れを決議することになったという。
制度が成立すると、今度は楽天が入札を受け入れるかどうかという問題も出てくる。
楽天の三木谷浩史オーナーは26日、田中のメジャー移籍について「個人的には、若い人が海外に挑戦するのはいいことだと思う」と発言。星野監督も「個人的には、若者がアメリカでチャレンジするということには賛成だ」と理解を示している。
しかし今季24個の貯金を一人で作った田中を放出するとなると、それなりの補強が必要になる。補強に必要な資金と20億円を天秤にかけ、入札を受け入れるかどうか、楽天は悩ましい選択が迫られる。
しかし、上限額の約20億円は来季以降引き上げられる可能性は低く、順調にいけば2015年には田中が海外FA権を取得する。FAなら移籍金は発生しないため、楽天としては今回の条件で受け入れざるをえないと思われている。
田中は11月21日に発表されたパ・リーグのベストナインに続き、26日に行われたプロ野球コンベンションでは予想通り、今季のパ・リーグの最優秀選手(MVP)に選ばれた。それも1位票を独占し満票での選出。満票でのMVPはパ・リーグでは1959年の杉浦(南海)、65年の野村(南海)に次ぎ3人目となる。
27日には「チームの勝利に最も貢献した魂あふれるプレー」に送られる「ジョージア魂賞」で、プロ野球新記録となる21連勝を達成した8月16日のピッチングが年間大賞に選ばれた。
翌28日には3年連続3度目のゴールデン・グラブ賞に輝くなど、オフの話題を独占している。