江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 【ネタあらすじ編】
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
そば清(そばせい)
蕎麦屋で見慣れない男が蕎麦を食べていた。その豪快な食べっぷりを遠巻きに見ていた江戸っ子たちは、蕎麦の食べ比べを思いつく。「実に見事な食べっぷり。20枚食べたら1分差し上げます」。男は「そんなに食べられるかな…」としぶりながらも食べ始めると20枚ペロリと食べてしまった。しゃくにさわった江戸っ子、翌日「今度は二分出すので、30枚でどうだ!」その男、またイヤイヤ引き受けるも30枚をペロリ。店の奥で酒を飲んでいた男によると「旅商人清兵衛さんと言って、通称“そば清”と呼ばれている蕎麦の大食いで有名な男」だそう。それを知らずにまんまと金を取られた江戸っ子たちはみんなで一両の金を作り、再び清兵衛さんに「50枚食べたら一両差し上げます」と勝負を挑む。しかしさすがの清兵衛さんもこれには自信がなく、信州へ商いに出てしまった。その帰り道、山の中で大きなウワバミが、木の下で居眠りをしていた狩人をペロリとひと飲み。驚いた清兵衛さんだが、しばらく様子を見ていると、お腹をパンパンにし、七転八倒をしていたウワバミが側に生えていた黄色い草を長い舌でペロペロと舐めだした。すると膨れていた腹が引っ込み、何事もなかったように去っていった。「これはすごい消化薬を見つけた」とその草を摘めるだけ摘んで江戸に戻った清兵衛さんは、再びあの蕎麦屋に向かう。待ち構えていた江戸っ子たちに「50枚と言わず、70枚食べてみせよう。その代わり掛金を3両にしていただきたい」と提案。話はまとまりいよいよ勝負の時。そこはさすがのそば清。目の前に置かれた大盛りの蕎麦をどんどん平らげていく。しかし60枚を超えたころから、だんだんと苦悶の表情に。肩で息を始める清兵衛さんに江戸っ子たちも、体に毒だから降参したほうがいいと忠告する。しかし、清兵衛さんは「少し休憩すれば大丈夫。風にあたってきます」と廊下に出て障子をピタッと閉めたかと思うと、例の草をペロペロ。いつまでたっても戻ってこないので、障子を開けると清兵衛さんの姿はなく、蕎麦が羽織を着て座っていた。ウワバミが舐めていたのは消化薬ではなく、人間を溶かす薬だったというお話。