江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 小言幸兵衛(こごとこうべえ)
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
麻生古川の家主・田中幸兵衛は、小言を言うことを生きがいにしているので、小言幸兵衛と呼ばれている。ある日、貸家札を見て、豆腐屋が店を借りたいとやって来た。しかし幸兵衛さん、口の利き方が気に食わないと言い出した。「子どもはいるか」と聞くと豆腐屋「餓鬼がいると汚くなるから、そんなものは一匹もいねえ」。すると「子宝というべきものを何てことを!大体子どもができないのは女房のせいだ。できそうな女房を紹介するから、今のやつとはとっとと離縁しちまな!」と言う始末。これには豆腐屋もカンカンに怒り、ノロケながら毒づき、帰ってしまった。次に来たのは、豆腐屋と正反対なバカ丁寧で腰が低く、真面目そうな男。「手前どものような者に、お店をお貸しいただけませんでしょうか」。これを聞いた幸兵衛、いい人が来たと座布団をすすめ、おまけに羊羹やお茶まで出す大サービス。「お仕事は何をされているのかな」「はい、仕立て屋を営んでいます」「仕立て屋だけに営(糸な)む。洒落がきいてるね。いやー、何から何まで気に入った」上機嫌で話していた幸兵衛さんだが、仕立て屋に20歳のせがれがいると聞くととたんに雲行きが怪しくなった。「せっかくだが、店は貸せないな」「何故ですか?」「長屋に心中が出る。つまりだ、向かいの古着屋には19歳になるお花という1人娘がいる。これがなかなかの器量よし。あっという間にお前さんのせがれと恋仲になるだろう」「そんな…うちの息子に限って…」「それは親の欲目というやつ。やがて2人は深い仲になって、そのうちお花のお腹が膨らんでくる。理由を問いただすと、お前さんのせがれの子だという。しかしそこは一人息子と一人娘。婿にはやれないし、嫁にもやれない。この世で結ばれぬのなら、いっそあの世で…と、心中騒ぎを引き起こすに違いない。よって店は貸せないから帰ってくれ!」呆れ果てて出て行った仕立て屋と入れ違いに入ってきたのは、やけの威勢のいい男。「やい、家主。あそこの店を貸しやがれ。店賃が高いなんて抜かしやがるとただじゃおかねえぞ!」「ずいぶん乱暴だな。お前さんの職業は?」「鉄砲鍛冶だ」「どうりでポンポン言い通しだ」。