理想の家族の正体はスパイ! 『レッド・ファミリー』 イ・ジュヒョン監督

 韓国の閑静な住宅街に暮らす理想的な一家。しかしその正体は暗殺や諜報を行う北朝鮮のスパイチーム。昨年、東京国際映画祭で上映され、圧倒的な支持を得て観客賞を受賞した話題の映画がいよいよ日本公開。メガホンをとった新鋭、イ・ジュヒョン監督は名匠キム・ギドクとともに脚本を書き上げ、見事な演出手腕を発揮。「キム・ギドクさんとは不思議なくらい考えがぴったり合っていたんです。実際、彼の事務所の人も“こんなことめったにない”って驚いていました(笑)。2人の間での修正作業も笑いの部分を作り上げていくことが重点的だったので、僕にとって作業そのものが楽しいことでした」。実は本作はシリアスな設定ながら、異文化や家族のギャップという笑いが盛り込まれたエンターテインメントなのだ。「キム・ギドク作品の中でも、本作は特に諧謔性の高いものになったと思います。キム・ギドクさんというと近寄りがたいイメージを持っている人が多いですが、実際はコメディアン顔負けのユーモアを持った人なんですよ(笑)。そういう面が今回たくさん反映されているのでそこも楽しんでほしいですね」。予想外なのは笑いの要素だけではない。笑いの後に押し寄せるのは、想像もしなかった感動の涙だ。「韓国の公開時には、ネットでも“どうせ左の映画だろう”といった口コミも多かったんです。僕らは、まさに当事者なので海外の方のように先入観を持たずに見ることは難しい。まずタイトルの“レッド”からして、これは右派か左派を論じている映画だと思われてしまう。しかし実際に見た人の反応はガラリと変わりました。この映画は体制の問題を扱いながらも家族や人間を描いた映画ですよ、と書き込んでくれる人もいました。海外の公開でどう受け止められるか、とても楽しみです」。

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『レッド・ファミリー』
監督:イ・ジュヒョン  出演:キム・ユミ他/ギャガ配給/10月4日より全国公開 
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