地元で食べるとやっぱりウマイ!
名産品の故郷を訪ねる【宮城編・牡蠣】
輸送システムの多様化や冷蔵・冷凍技術の進歩、インターネットの普及で東京にいながら簡単に地方のおいしいものを楽しめる現在。しかしその一方、鮮度が命の野菜や果物や、輸送のストレスに弱い魚介類などなど、まだまだ現地で楽しむしかないものもある。そんなお取り寄せできるもの、できないものも含め、ぜひ味わってほしい地方の名産品を紹介する不定期連載第2弾。今回は、今が旬の牡蠣ほか宮城のウマイ水産品をご紹介!
牡蠣
海の滋味をたっぷり含んだ牡蠣は、生のほかさまざまな調理法で楽しめる冬の味覚。宮城県には、そんな牡蠣の全国的にも有名な産地(浜)がいくつもある。土壌、気候、養殖方法など産地ごとに違いがあり、見た目も味もさまざま。今回は唐桑、河北、鳴瀬の牡蠣について、その特徴を紹介する。
三陸唐桑もまれ牡蠣(唐桑)
気仙沼市唐桑町の名産“もまれ牡蠣”は、大粒でふっくらしていて、甘みがありきれいな乳白色が特徴。“もまれ”の由来は、牡蠣をカゴに入れて海に吊るし、その成長に合わせて、潮目のきついところや、海とぶつかる河口などに移動させるため、三陸リアスの潮などに“もまれ”て育つところからきている。このもまれ牡蠣は、養殖期間が通常なら2年のところ、3年をかけ育てられ、その育て方も大変手間がかかっている。
まず、種がきの段階で、良いもののみを選別、種を間引きする。それがある程度成長してきたら、「耳吊り」という作業をし、20個の牡蠣を約6〜8個にする。これは、牡蠣の密集を抑えて成長を促進させるためで、牡蠣を1個1個バラして、根本にドリルで穴を空け、そこにテグスを通してつなぎ、いかだに吊るし再び海に垂下する。これをすることで、奥のほうにある牡蠣もプランクトンなどの栄養を取り入れることができるのだ。同作業をした後、いかだを内海から外海へ、また外海から内海へと移動させる。これは品質のバラつきをなくすためで、時間も手間のかかる作業だ。
さらに、牡蠣の栄養を奪う、牡蠣に付着している雜貝や海草を取り除くために「温湯処理」を施す。これは、牡蠣を70度のお湯に20秒つけて戻すという作業で、牡蠣についている付着物のみが取れ、その後の2カ月間、牡蠣がたっぷりとプランクトンを摂取することができるのだ。さらに、この作業により、牡蠣の殻がギュッと閉じられ、成長が促進される。漁獲された牡蠣は24時間浄化槽に入れられ、中の老廃物を出して、出荷される。このように、通常より長い期間、手間隙かけて作られた牡蠣は、非常に希少性の高い牡蠣として、全国でも人気のブランドとなっている。
長面浦牡蠣(河北町)
恵まれた環境と生産者の努力により、1年で出荷可能な長面浦牡蠣。1年ものとは思えない身入りと雑味が少なく甘みが強いのが特徴だ。三方を山に囲まれ、狭い水路で海とつながる汽水域という特殊な漁場は、森の恵みであるミネラルをたっぷり含んだ伏流水が流れ込むため、牡蠣が豊富な栄養を取り込むことができる。また、養殖いかだの間隔をゆったりとることで、ひと粒ひと粒にたっぷり栄養が行き渡り、高品質の牡蠣となっている。
鳴瀬牡蠣(鳴瀬)
鳴瀬川や北上川などが豊富に流れ込む漁場で育った鳴瀬牡蠣は、ほかの海域と比べ身入りが早く、甘みが濃く、雑味が少ない。また身入りのばらつきが少ないので、県内外の飲食店やホテル、料亭などから高い評価を得ている。また、全国の牡蠣の産地へ種がきを供給する産地でもある。全国の生産者から選ばれる種がきを生産できるということは、牡蠣が成長するのに最も適した環境だということを裏付けており、指名買いの実績もそれを証明している。