山口宇部”げってん”ツアー【観光スポット編】
地方の知られざる“スゴ技”に出会うのも旅の醍醐味。今回はそんなこだわりの数々に出会える街、山口県宇部市を訪問。山口地方の方言では、こだわりを持った人たちのことを“げってん”と呼ぶ。宇部市で出会える、今と昔の“げってん”ポイントを紹介します!
工場に萌え! 動物に萌え!
通常、観光で思い浮かべるのは、寺社仏閣めぐりや温泉だが、宇部観光で欠かせないのは宇部市交通局などが企画・実施している産業観光ツアーだ。近年、各地で工場見学ツアーが人気だが宇部のツアーは他では体感できないスケール感が特徴。セメントの材料となる石灰石を露天掘りで採掘している宇部興産伊佐セメント工場と石灰石鉱山や、セメント材料を運搬するために作られた全長約32kmの宇部興産専用道路(私有道路としては国内最長)、その道路を走る運搬車・ダブルストレーラー(全長30メートル。巨大すぎて一般道路を走ることはできない)などを見学できる。安全に効率よく作業するために専用道路まで作ってしまうというこだわりっぷり。ここに秘められた情熱は、宇部の街と宇部興産の歴史的背景を知っておくとより深く理解できる。
宇部は17世紀から続く石炭の産出地として知られていたが、明治30年に沖ノ山炭鉱組合(宇部興産の前身)を創設し、石炭業で成功した渡辺祐策は「有限の鉱業から無限の工業へ」という理念のもと、鉄工所やセメント、化学などの工場を設置。いち早く炭坑産業から現代工業への切り替えに成功した、珍しいケースとなった。加えて着目したいのが、渡辺が企業と地元、双方の発展を重視していた点。渡辺が教育や医療機関の設立、電気や水道といったインフラ整備などに携わったことから宇部は“CSRでできた街”とも呼ばれる。
そんな偉人の功績を称えて1937年に建てられた渡辺翁記念館は、国の重要文化財にして、現在もコンサートホールなどとして利用されている建築物。設計は日生劇場なども手掛けた近代建築の巨匠・村野藤吾。大理石を多用した豪華さや前衛的ともいえるデザインが見られるほか、当時の友好国ドイツ・ナチス政権で愛用されていた鷲や十時のモチーフが、ランプや装飾に使われているのも興味深い。
文化面で見られるのが“彫刻”へのこだわりだ。宇部では国内最大・最長の屋外彫刻展『UBEビエンナーレ』を開催しており、今年は第26回展を10月4日〜11月29日まで開催予定。会期中はもちろん、通常時も街のいたるところに彫刻作品が設置されており、その数、約200点。街全体が野外彫刻の美術館ともいえるのだ。
宇部のこだわりスピリッツは、最新スポットでも感じることができる。この春、新たにオープンした『ときわ動物園』は、それぞれの動物が生息している環境を再現することによって本来の行動を引き出す “生息環境展示”を採用。同園では、全園で生息環境展示を行う予定で、これは全国でも初めての試みだ。この春、一足先にオープンしたのがボンネットモンキーやシロテテナガザルが国内最多数、飼育されている〈アジアの森林ゾーン〉。シロテテナガザルのエリアは、水堀に囲まれた島に本物の高木を利用した林が設置されており、シロテテナガザルが、手でぶら下がりながら木々を行き来する野生さながらの姿を見ることができる。かわいい動物の姿はもちろん、彼らの自然な姿を引き出すことにこだわった工夫の数々にも目を凝らしてほしい。全面オープンは2016年春の予定。
【空のアクセス】山口県宇部空港—羽田空港 約90分
【宇部市】http://www.city.ube.yamaguchi.jp/
【宇部観光コンベンション】http://ube-kankou.or.jp/
宇部興産株式会社【URL】http://www.ube-ind.co.jp
宇部・美祢・山陽小野田 産業観光バスツアー 『大人の社会派ツアー』【URL】http://www.csr-tourism.jp/
ときわ動物園【URL】http://tokiwa-zoo.jp/
ときわ公園【URL】http://tokiwa.ube.ac/
琴崎八幡宮【URL】http://kotozaki.com/